動脈硬化 / Arteriosclerosis

目次 / Index

動脈硬化とは

血管は、全身の組織や細胞に血液を循環させる管状の器官です。心臓から送り出される血液が流れるのが動脈です。心臓からの強い圧力に耐えるため、動脈は頑丈かつ柔軟性に富んでいますが、動脈硬化が進行するとその柔軟性が失われ、高血圧の原因となります。さらに動脈硬化が進行すると、動脈内腔が狭窄し、血流が遮断される梗塞が生じます。心臓や脳の動脈が梗塞する心筋梗塞や脳梗塞は、日本人の死因で大きな割合を占めます。若年齢から徐々に進行する動脈硬化は、超高齢社会における心血管疾患の重大な危険因子であり、その予防・治療法の開発は喫緊の課題となっています。

血管の構造

動脈の構造は、内膜・中膜・外膜の3層からなります。外膜は、線維芽細胞などからなる結合組織です。

内膜は、一層の血管内皮細胞からなり、内腔を流れる血液と直接接触します。血管内皮障害は、血中の様々な因子や、血流の物理的な力によって内皮細胞の機能が低下した状態で、動脈硬化の第一歩です。

中膜は、主に血管平滑筋細胞と弾性線維からなる多層構造です。中膜は、血圧に耐えるために厚く発達すると同時に、弾力性を兼ね備えています。平滑筋細胞が増殖し過ぎると、内腔が狭窄して血流が滞ります。また、平滑筋細胞から柔軟性が失われると、血管壁が破れやすくなります。私たちは、血管平滑筋細胞を標的とした動脈硬化の予防・治療を目指して研究を進めています。

血管の構造
Fig 1. 血管の構造 / Vascular structure

動脈硬化と血管平滑筋

アテローム性動脈硬化では、中膜の血管平滑筋細胞が脱分化して内膜側に遊走し、異常に増殖することで血管の内腔が狭窄することで、心筋梗塞や脳梗塞の原因となります。

メンケベルグ型動脈硬化 (中膜硬化)では、加齢に伴って骨芽細胞様に形質転換した血管平滑筋細胞が石灰化し、血管が破綻しやすくなります。

このように動脈硬化は、血管平滑筋細胞の増殖・分化・石灰化と密接に関係しています。平滑筋は、心筋や骨格筋とは異なり、分化・脱分化が可逆的に起こる細胞です。動脈硬化の予防や治療には、平滑筋細胞の分化を制御することが重要だと考えられています。私たちは、骨格筋の分化を促進する筋形成型オリゴ DNA (myoDN) が、血管平滑筋にも作用し、動脈硬化の治療薬として応用できるのではないかと考えて研究を進めています。

動脈硬化と血管平滑筋