健康長寿社会への貢献

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平均寿命と健康寿命 /Lifespan and healthspan

日本は世界的な長寿国です。日本人の平均寿命は、女性が 87.1 歳、男性が 81.0 歳です。しかし、平均寿命の単純な延長が人々の幸福につながるとは限りません。健康寿命は、医療や介護に依存せずに自立した生活を営める生存期間です。日本人の健康寿命は、女性が 74.8 歳、男性が 72.1 歳です。健康寿命が尽きてから平均寿命を迎えるまでは、医療や介護が必要になりますが、この期間は女性で 12.4 年間、男性で 8.8 年間になります。この期間の長さは、医療財政、福祉医療、終末介護などに直接影響します。超高齢社会を迎えた日本では、健康寿命の延伸こそが重要であると考えられています。そのためには、加齢に伴う身体機能の低下を防ぐ予防医学の観点が大切です。私たちは、様々な組織の幹細胞に作用する独自の分子の研究を通じて、健康長寿社会への貢献を目指しています。

平均寿命と健康寿命

自立した生活ができなくなると、支援や介護が必要になります。つまり、要支援・要介護になった原因は、健康寿命が尽きた理由を反映しています。その第1位は、運動器の障害 (ロコモティブ症候群) で、全体の 25% を占めます。第2位は認知症 (18%) です。第3位の脳血管疾患 (17%) には、メタボリック症候群を基盤とする心臓病・脳卒中が含まれます。私たちの研究室では、これらの疾患に深く関わる、筋肉・骨・心臓・血管・脂肪を構成する細胞を研究の対象にしています。

要支援・要介護になった原因

ロコモティブ・シンドローム (運動器症候群)

ロコモティブ・シンドローム (運動器症候群) は、全身の運動を司る筋肉・骨・関節の障害の総称です。ロコモティブ・シンドロームは、日常生活動作 (ADL; activities of daily living) や生活の質 (QOL; quality of life) を低下させ、最終的には歩行障害や寝たきりを引き起こす大きな要因となっています。

筋肉 (骨格筋) の力や量が減少すると、運動機能が低下します。特に、高齢者で生じる筋萎縮はサルコペニア (加齢性筋量減少症)と呼ばれ、フレイル (老年性虚弱) の大きな原因となっています。筋量の減少は、運動機能だけではなく、がんや心臓病などの予後にも影響することが知られています。

の量や密度が減少すると、骨折しやすくなります。骨密度が低下する骨粗鬆症は、高齢者や、閉経後にホルモンバランスが変化する女性に多いとされます。また、糖尿病、動脈硬化、慢性腎臓病などの代謝性疾患によっても骨量が低下します。

関節の障害である変形性関節症や脊柱管狭窄症は、骨粗鬆症とともにロコモティブ症候群の三大原因疾患となっています。また、関節の炎症であるリウマチも運動障害の原因となります。

ロコモティブ・シンドロームの克服と健康寿命の延伸は、超高齢社会における大きな挑戦です。私たちは、筋萎縮症や骨粗鬆症の予防・治療法の確立を目指して研究を行っています。以下のページで研究内容を詳しく紹介しています。

骨格筋

ロコモティブ・シンドローム (運動器症候群)

メタボリック・シンドローム (内臓脂肪症候群)

日本人の死因の第1位はがん (27.4%) ですが、第2位の心疾患 (15.3%) と第4位の脳血管疾患 (7.9%) を合わせた心血管疾患も 23.2% を占めます。直接の死因である心筋梗塞や脳梗塞は、血管が詰まって血流が遮断されることで生じます。その原因の多くは動脈硬化です。動脈硬化は若年齢から徐々に進行しますが、個人差があります。中でも、死の四重奏と呼ばれる肥満・糖尿病・脂質異常症・高血圧を代表とする生活習慣病は、動脈硬化症の重大な危険因子です。生活習慣病の予防は、動脈硬化の進展を抑え、心血管疾患の発症リスクを低減させるために重要です。

日本人の死因

メタボリック・シンドローム (内臓脂肪症候群) は、肥満・糖尿病・脂質異常症・高血圧などの危険因子を複数同時に有している状態を指し、心血管疾患を発症するリスクが極めて高くなります。日本では、メタボリック・シンドロームの診断が以下のように定められています。肥満が必須項目となっているのは、肥満自体が高血糖などの危険因子でもあるからです。肥満の抑制は、メタボリック・シンドロームと心血管疾患を予防する上で最も重要な課題の一つです。

必須項目 肥満
(内臓脂肪蓄積)
ウエスト周囲径 女性 90 cm 以上
男性 85 cm 以上
選択項目

3項目中、
2項目以上
脂質異常症
1項目以上
高トリグリセリド血症
低 HDL コレステロール血症
150 mg/dL 以上
40 mg/dL 未満
高血圧
1項目以上
収縮期 (最大) 血圧
拡張期 (最小) 血圧
130 mmHg 以上
85 mmHg 以上
高血糖 空腹時血糖 110 mg/dL 以上

私たちは、メタボリック・シンドロームと心血管疾患の予防・治療法の開発を目指して研究を行っています。以下のページで研究内容を詳しく紹介しています。

動脈硬化

心疾患

参考文献

メタボリックシンドローム診断基準検討委員会. メタボリックシンドロームの定義と診断基準. 日本内科学会雑誌. 2005; 94: 188-203.