顔面肩甲上腕型筋ジストロフィーの治療法探索
吉沢隆浩1, 富山愛隆2, 中澤博美2, 畑志織2, 柴直子3, 高谷智英4, 宮崎大吾5,8, 中田勉10, 柴祐司3, 中村昭則5,7, 古庄知己6,9.
- 信州大学基盤研究支援センター動物実験支援部門.
- 信州大学医学部創薬科学講座.
- 信州大学医学部再生医科学教室.
- 信州大学農学部分子細胞機能学研究室.
- 信州大学医学部内科学第三教室.
- 信州大学医学部遺伝医学教室.
- 国立病院機構まつもと医療センター臨床研究部.
- 信州大学医学部附属病院信州診療連携センター難病相談支援部門.
- 信州大学医学部附属病院遺伝子医療研究センター.
- 信州大学基盤研究支援センター機器分析支援部門.
第8回日本筋学会学術集会 (東京), 2022/08/06 (口演).
本研究は Young Investigator Award 優秀賞を受賞しました。
Abstract
顔面肩甲上腕型筋ジストロフィー (FSHD) の原因として、D4Z4 配列のメチル化低下による DUX4 遺伝子の異常発現が知られているが、治療法確立には至っていない。本研究では、FSHDモデル動物の検討と、治療薬候補物質の探索、治療効果の検証を行った。CRISPR/Cas9 によるゲノム編集で作出した D4Z4 様反復配列短縮マウスでは、中心核の軽度の増加が確認されたが、筋炎症は観察されず、握力や血中 CK にも差を認めなかった。一方で、薬剤誘導型骨格筋特異的ヒト DUX4 過剰発現マウス (hDUX4 Tg) では、握力と筋持久力の有意な低下や骨格筋障害像を認めた。次に、DUX4 を強制発現した横紋筋肉腫細胞の細胞死を抑制する化合物を探索し、ヒット化合物 (化合物 X) を得た。さらに、化合物 X を hDUX4 Tg に投与したところ、握力や筋持久力の低下が抑制された。 以上の結果から、DUX4 の骨格筋障害に対する化合物 X の抑制効果が示唆され、FSHD の治療法開発への貢献が期待された。