骨芽細胞分化を促進し破骨細胞形成を阻害する骨形成型オリゴ DNA の同定

骨芽細胞分化を促進し破骨細胞形成を阻害する骨形成型オリゴ DNA の同定

高谷智英1,2,3, 二橋佑磨1, 池田玲奈2, 三好愛2, 梅澤公二1,2,3, 下里剛士1,2,3.

  1. 信州大学大学院総合医理工学研究科.
  2. 信州大学大学院総合理工学研究科.
  3. 信州大学バイオメディカル研究所.

日本核酸医薬学会第7回年会 (東京), 2022/08/02 (ポスター).

Abstract

我々は最近、乳酸菌ゲノム配列に由来する18塩基のオリゴ DNA ライブラリから、抗ヌクレオリンアプタマーとして機能することで骨格筋分化を促進する、筋形成型オリゴ DNA (myoDN) を同定した。本研究では、同ライブラリを用い、骨の前駆細胞である骨芽細胞を活性化する配列を探索した。骨分化マーカーであるアルカリフォスファターゼの活性を指標としたスクリーニングから、CpG モチーフを一つ有する配列 iSN40 が、骨芽細胞の分化を促進することを見出した。iSN40 は骨特異的遺伝子群の発現を誘導し、石灰化した骨細胞へ成熟させることがわかった。iSN40 の CpG モチーフを GC に置換した iSN40-GC も骨分化を促進したが、代表的な CpG オリゴ DNA である CpG-2006 には骨分化促進作用を認めなかった。このことから、iSN40 の作用は TLR9 非依存的であることが強く示唆される。

骨代謝において、骨芽細胞による骨形成と破骨細胞による骨吸収は、両細胞間のシグナル伝達によって均衡が維持される。破骨細胞における上記オリゴ DNA の影響を検討した結果、iSN40 と CpG-2006 は RANKL 依存的な破骨細胞形成を完全に阻害した一方、iSN40-GC にはその作用を認めなかった。また、iSN40 の効果は、TLR9 阻害剤 E6446 の前処理によってキャンセルされた。以上の結果から、iSN40 の CpG モチーフが TLR9 に認識されることで破骨細胞の分化が抑制されることがわかった。

TLR9 非依存的に骨分化を誘導し、TLR9 依存的に破骨細胞形成を阻害する iSN40 の同定は、骨代謝の不均衡による骨粗鬆症に新たな治療戦略を提供するものと期待される。