ブロイラーの Wooden Breast 病態を左右するミトコンドリアクリアランス機構
細谷実里奈1, 川崎武志2, 長谷川靖洋3, 若櫻祐衣1, 星野真希1, 髙橋直紀4, 植田弘美1, 高谷智英5, 岩﨑智仁3, 渡邉敬文1.
- 酪農学園大学獣医学群.
- 人と鳥の健康研究所.
- 酪農学園大学農食環境学群.
- 日本大学生物資源科学部.
- 信州大大学農学部.
第1回日本獣医解剖アカデミア (オンライン), 2021/03/06 (口演).
Abstract
【背景と目的】ブロイラーの浅胸筋における異常硬化 (Wooden breast, WB) の発現には、急速な浅胸筋の発育に伴う虚血状態下での酸化ストレスが関与するが、その詳細な分子機構は明らかではない。本研究では、酸化ストレス応答に関与するミトコンドリアの形態・動態に着目し、WB 発現との関連を調査した。
【材料と方法】酪農学園大学鶏舎で飼養された50日齢・雄のブロイラー (Ross308) 35羽の浅胸筋を採取した。WB 発現程度の指標値として、筋組織の線維化率 (FA) 及び筋線維の円形度 (CM) を光学顕微鏡観察で計測した。筋線維内のミトコンドリア形態を透過型電子顕微鏡で観察した。筋組織中の酸化ストレス応答関連分子 (HIF1A, VEGFA)、ミトコンドリア動態関連分子 (MFN1, MFN2, OPA1, DRP1) 及びオートファジー/マイトファジー関連分子 (MAL1LC3A, MAL1LC3B, PARK2) の発現量を定量的 PCR で解析し、FA・CM との相関解析を実施した。
【結果と考察】鶏群の FA・CM はそれぞれ 24.9±9.6%・0.70±0.04であった。全個体において筋線維に直径 5 um 程度の小空胞がみられ、超微形態的にはミトコンドリアを貪食するオートファゴソーム様であった。FA・CM の高い WB 進行個体においては、筋線維に直径 20 um 以上の大きな空胞がみられた。FA・CM は VEGFA の発現量と有意な正の相関を、ミトコンドリア動態関連分子の発現量と有意な負の相関を示した。ミトコンドリア動態関連分子の発現量と VEGFA 及びオートファジー/マイトファジー関連分子の発現量は有意な正の相関を示した。以上、ブロイラーの浅胸筋は、酸化ストレスに起因するミトコンドリアの損傷をマイトファジーによって排除する生理的クリアランス機能を備え、その機能低下が WB の進行に関与する可能性が示唆された。
キーワード:運動装置