新規骨形成型オリゴ DNA 配列の同定

新規骨形成型オリゴ DNA 配列の同定

池田玲奈1, 梅澤公二1,2,3, 二橋佑磨2, 下里剛士1,2,3, 坂本泰一4, 高谷智英1,2,3.

  1. 信州大学大学院総合理工学研究科.
  2. 信州大学バイオメディカル研究所.
  3. 信州大学大学院総合医理工学研究科.
  4. 千葉工業大学先進工学部.

第20回日本抗加齢医学会 (東京), 2020/09/26 (口演).

Abstract

【目的】超高齢化社会で増加する加齢性筋萎縮 (サルコペニア) は、健康寿命を阻害する要因の一つである。筋組織の恒常性は、筋芽細胞の増殖と分化によって保たれるが、その分化能は加齢とともに減弱する。我々は最近、18塩基のオリゴ DNA (ODN) である iSN0 4が、筋芽細胞の分化を強力に促進することを見出した。iSN04 は立体構造依存的に活性を発揮することから、本研究では、iSN04 と類似の構造をとると推測される 11-16 塩基の配列 (iMyo01-08) を設計し、それらの筋分化促進作用を検討した。

【方法】ヒト筋芽細胞を96穴プレートに播種し、終濃度 30 uM の ODN を添加した培地で筋分化を誘導した。48時間後にミオシン重鎖 (MHC) を蛍光免疫染色し、細胞あたりの蛍光強度を算出して筋分化の指標とした。また、ODN 依存的な遺伝子発現変化を qPCR で定量した。さらに、各 ODN の構造を分子動力学シミュレーションするとともに、一部の ODN についてはNMR解析を行い、ODN の配列と構造の相関を検討した。

【結果】12塩基の iMyo01 と14塩基の iMyo03 は、iSN04 と同様に、ヒト筋芽細胞の分化を有意に促進した。1分子シミュレーションの結果、iMyo01 と iMyo03 の分子内に近接したグアニン塩基群 (Gスタック) を認め、iSN04 の活性中心である 13-15 塩基目のGスタックと類似した部分構造をとることがわかった。さらに、iMyo01 の NMR 測定では明瞭なG四重鎖構造のシグナルが検出され、iMyo01 が多量体を形成していることが推測された。

【結論】18塩基の iSN04 と同等の筋分化促進作用を示す、12-14塩 基の新規配列 iMyo01 と iMyo03 の開発に成功した。いずれの ODN も、分子内あるいは分子間でGスタックを形成し、この構造が筋分化促進作用に必須であることが示唆された。さらに解析を進めることで、筋形成型オリゴ DNA の活性に必須の構造的特徴の決定や、配列のさらなる短縮につながると期待される。ODN の短縮化は、合成コストの削減、摂取後の吸収や細胞内輸送の効率化など、筋萎縮の予防・治療薬としての応用展開に有用であると期待される。