ニワトリ幹細胞の育種への活用

ニワトリ幹細胞の育種への活用

鏡味裕1,2,3, 平松浩二1, 小野珠乙1, 高谷智英1.

  1. 信州大学農学部.
  2. 日本学術振興会.
  3. 日本学術会議.

日本家禽学会2018年度春季大会 (東京), 2018/03/30 (口演).

Abstract

【目的】我々はこれまでに、ニワトリ初期胚における多能性幹細胞の同定と分化制御関する実験系を開発してきた (Kagami (2016); 鏡味 (2016); 鏡味 (2017))。そこで、この幹細胞の分化制御によるキメラ作出と将来的な育種への活用を展望した。

【方法】放卵直後のニワトリ受精卵の胚盤葉から多能性幹細胞を採取した。この細胞をニワトリにおける VASA を用いて免疫組織化学的に解析した。これらの多能性幹細胞をレシピエントニワトリ胚盤葉に移植した。キメラ胚を全胚培養法で培養した。孵化したキメラ雛は通常を飼育した。キメラが生成熟に達した後に後代検定を行い、生殖細胞キメラの検定を試みた。

【結果】性成熟に達したキメラの後代検定の結果から、キメラニワトリ多能性幹細胞は受精能を保持する配偶子へと効率的に発生分化し得ることが明らかとなった。また幹細胞はキメラ個体において、羽、筋肉、等の様々な組織や器官へと発生分化し得ることも確認された。ニワトリ幹細胞の発生分化研究の一層の改善によって将来的な育種への貢献が期待された。

【文献】Kagami (2016) Anim Sci J; 鏡味裕 (2016) 創造的な研究を公正に, 日本学術振興会編; 鏡味裕 (2017) 幹細胞の解析と畜産、自然保護:生命工学的な解析が持つ意義, 日本学術会議ニュースレター.