骨格筋幹細胞の分化に作用する乳酸菌由来オリゴ DNA の探索

骨格筋幹細胞の分化に作用する乳酸菌由来オリゴ DNA の探索

進士彩華1, 梅澤公二1,2, 下里剛士1,2,3, 高谷智英1,2.

  1. 信州大学農学部.
  2. 信州大学バイオメディカル研究所.
  3. 信州大学菌類・微生物ダイナミズム創発研究センター.

日本畜産学会第122回大会 (神戸), 2017/03/29 (口演).

Abstract

超高齢社会では、ロコモティブ症候群やサルコペニアなど、筋肉の減弱による高齢者の運動機能の低下が問題となっている。筋力や筋量の維持には、食事などによる日常的な予防が重要である。微生物由来のゲノム DNA や、その活性配列を模して合成されたオリゴ DNA (ODN) は、優れた免疫機能を有し、医薬や食品への応用が期待される核酸素材である。しかし、免疫系以外の細胞を標的とするODNは報告されていない。我々は最近、乳酸菌 Lactobacillus rhamnosus GG のゲノムに由来する ODN ライブラリを用い、マウス骨格筋幹細胞 (筋芽細胞) への作用をスクリーニングした結果、筋分化を強力に促進する一連の新規 ODN 群 (myo-ODN) を同定した。myo-ODN を投与した筋芽細胞では、細胞増殖が抑制され、ミオシン重鎖陽性の筋管形成が促進される。同様の現象はニワトリ筋芽細胞でも認められた。myo-ODN は熱変性で失活することから、その活性は立体構造に依存することが示唆された。現在、myo-ODN と、活性を示さない myo-ODN 類似配列について分子シミュレーションを実行している。今後、myo-ODN の作用機序や活性構造を明らかにすることで、筋疾患に予防効果を示す新たな核酸素材の提案につながることが期待される。