心不全 Dahl ラットの心機能低下に伴い左室 LOX-1 の発現は亢進する

心不全 Dahl ラットの心機能低下に伴い左室 LOX-1 の発現は亢進する

高谷智英1, 和田啓道2, 藤田佳子1, 森本達也3, 沢村達也1, 長谷川浩二2.

  1. 国立循環器病研究センター研究所血管生理学部.
  2. 国立病院機構京都医療センター展開医療研究部.
  3. 静岡県立大学大学院薬学研究科分子病態学.

第21回日本循環薬理学会 (岡山), 2011/12/02 (口演).

Abstract

【目的】心筋細胞における酸化 LDL 受容体 LOX-1 の発現は、酸化ストレスやホルモン性の刺激によって亢進する。本研究では、食塩感受性高血圧 Dahl (DS) ラットを用い、心不全の進展における左室 LOX-1 の発現量と心機能の指標との相関を解析した。また、ヒト心不全における LOX-1 の動態を調べるため、血清中の可溶型 LOX-1 (sLOX-1) を定量した。

【方法・結果】
(1) DS ラットの左室 LOX-1 mRNA 量は、対照の食塩抵抗性 Dahl (DR) ラットに比べ、左室肥大を伴う 11 週齢で 4.7 倍に、収縮能の低下を伴う 18 週齢で 32 倍に上昇した。また、ウェスタンブロットおよび免疫染色により、18 週齢 DS ラットの左室血管壁および心筋細胞において LOX-1 タンパク質の発現が著名に亢進していることを認めた。

(2) Dahl ラットの左室 LOX-1 mRNA 量は、血圧、心肥大 (左室重量、左室壁厚)、収縮能 (左室収縮終期径、左室駆出率)、BNP (血中濃度、mRNA 量)、炎症性サイトカインの mRNA 量 (MCP-1, IL-1β, TGF-β1)、マクロファージマーカー F4/80 の mRNA 量と有意な相関を示した。

(3) 左室肥大を伴う心不全患者群と、左室肥大がなく収縮能が正常な対照患者群の血清中の sLOX-1 量を ELISA によって定量したところ、心不全患者群の血中 sLOX-1 濃度は対照群と比べて有意に増加していた。また、sLOX-1 濃度は左室駆出率と有意な負の相関を示した。

【考察】動物実験の結果から、心不全の進展における LOX-1 の発現亢進がマクロファージやサイトカインを介した炎症に関わり、心機能にも影響していることが考えられた。また、ヒト sLOX-1 の血中濃度は心不全患者の心機能を反映することが示唆された。sLOX-1 や LOX-1 リガンド量は冠動脈疾患や虚血性脳卒中の指標として機能するが、心不全においても有用性を示すことが期待される。