p300 特異的 HAT 限害剤クルクミンはラット心筋梗塞後心不全を改善した

p300 特異的 HAT 限害剤クルクミンはラット心筋梗塞後心不全を改善した

並木雅俊1, 砂川陽一1,2,3, 川村晃久3, 高谷智英3, 和田啓道3, 刀坂泰史1, 米田正始2, 島津章3, 北徹2, 藤田正俊2, 長谷川浩二3, 森本達也1.

  1. 静岡県立大学薬学部.
  2. 京都大学大学院医学研究科.
  3. 国立病院機構京都医療センター.

第131回日本薬学会年会 (静岡), 2011/03/30 (中止).

Abstract

【目的】我々は、心不全発症の核内伝達経路を詳細に解明したところヒストンアセチル化酵素 (HAT) 活性を持つ p300 が重要な役割を果たしていることをみいだした。最近、天然ウコン成分であるクルクミンが p300 特異的 HAT 活性を阻害することが報告され、培養心筋細胞を用いてその効果を検討したところ心筋細胞肥大を抑制した。そこでクルクミンを用いて心筋梗塞ラットに対する心不全進行抑制効果の検討を行った。

【方法】8週齢の SD ラットに心筋梗塞 (MI) 及び Sham 手術を行い、1週間後心エコー検査を行いランダムに2群に分け、手術後1週間から6週間、クルクミン 50 mg/kg (クルクミン群) およびアカシアガム (コントロール群) の投与を行い、心臓超音波検査及び組織学的検査、生化学的検査で治療効果を評価した。

【結果】術後1週間後の血圧、体重に有意差はなかった。術後7週間後の左室短縮率は、コントロール群に比べて、クルクミン群では有意に心機能の低下を抑制した。また、心筋梗塞によって心室後壁厚は Sham 群と比べてコントロール群では肥厚を呈したが、クルクミン群は有意に肥大を抑制した。組織所見に関しても心筋梗塞に伴う個々の心筋細胞の肥大をクルクミンは有意に抑制した。免疫沈降-ウェスタンブロット法にて GATA-4 のアセチル化を検討したところ、心筋梗塞で誘導された GATA-4 のアセチル化はクルクミンによって有意に抑制された。

【考察】以上の結果より、クルクミンは p300 の HAT 活性を抑制することによって心筋梗塞後の心不全進行を抑制することが示唆された。安価で安全性の高い天然物クルクミンが心不全治療薬として用いられる可能性が示唆された。