G-CSF/erythropoietin 併用療法は心筋梗塞後心不全の進行を抑制する

G-CSF/erythropoietin 併用療法は心筋梗塞後心不全の進行を抑制する

砂川陽一1,4,5, 刀坂泰史4, 高谷智英2,5, 和田啓道5, 桑木知朗6, 丸井晃3, 池田義3, 坂田隆造3, 島津章5, 木村剛2, 藤田正俊1, 長谷川浩二5, 森本 達也4.

  1. 京都大学医学部人間健康科学.
  2. 京都大学医学部循環器内科.
  3. 京都大学医学部心臓血管外科.
  4. 静岡県立大学薬学部.
  5. 国立病院機構京都医療センター.
  6. キリンファーマ株式会社.

第122回日本薬理学会関東部会 (静岡), 2010/06/05 (ポスター).

Abstract

【目的】G-CSF は造血前駆細胞を動員し、心筋梗塞後の心機能を改善させることが知られている。しかし臨床現場において、この G-CSF を活用するためには更なる改良が求められる。そこで我々は血管新生亢進、心筋細胞のアポトーシス抑制、梗塞サイズの縮小といった有能な機能を持っている erythropoietin (EPO) に着目した。すなわち G-CSF と EPO を併用することで、G-CSF によって動員された前駆細胞が EPO の働きで心臓に定着し G-CSF の機能をさらに高めるのではないかと考えた。本研究では G-CSF と EPO の併用によるラット心筋梗塞後の心不全進行への治療効果の検討を目的とした。

【方法】雄性 SD ラットに心筋梗塞および偽手術を処置し、１週間後に心臓超音波検査を行い、左室短縮率 40% 以下の中程度の心筋梗塞を持つラット 36 匹を無作為に４群に分類した。I：コントロール (生理食塩水) 群、II：G-CSF (4.5 ug/kg/day) 投与群、III：EPO (3000 U/kg/day) 投与群、IV：G-CSF+EPO 併用群。週３回薬物の皮下投与を６週間行い、治療効果を心臓超音波検査、血液検査および組織学所見にて検討した。

【結果】術後１週間目の体重、血圧、心臓超音波検査による各種パラメーターに４群間の差は認められなかった。EPO を投与することで赤血球吸うが増加し血圧は上昇するが、薬物投与６週間後の体重、心拍数、左室後壁厚、左室拡張期径には心筋梗塞ラット４群間で差は見られなかった。左室短縮率は心筋梗塞に伴って減少するが、コントロール群と比較して G-CSF 投与群では 11%、EPO 投与群で 12% の心機能改善効果を認めた。さらに G-CSF+EPO 併用群では 32% (p < 0.05) と相乗的な改善効果が認められた。心筋梗塞によって増加する心臓の血管周囲の線維化はコントロール群と比較して G-CSF 投与群、EPO 投与群で有意に抑制されるが、G-CSF+EPO 併用群ではさらなる線維化の抑制が認められた。

【考察】G-CSF と EPO の併用療法は心筋梗塞後の心機能の低下を相乗的に改善することが明らかとなり、心不全治療への応用が期待される。