Cdk9 阻害により p300/GATA4 経路活性による心筋肥大を抑制する

Cdk9 阻害により p300/GATA4 経路活性による心筋肥大を抑制する

寺田太士1, 森本達也1, 砂川陽一1,2,3, 高谷智英2,3, 川村晃久2, 和田啓道2, 鶏内伸二3, 島津章2, 木村剛3, 藤田正俊3, 長谷川浩二2.

  1. 静岡県立大学薬学部.
  2. 国立病院機構京都医療センター.
  3. 京都大学大学院医学研究科.

第19回日本病院薬剤師会東海ブロック学術大会・平成21年度日本薬学会東海支部例会 (四日市), 2009/11/23 (ポスター).

Abstract

【目的】我々は、心筋特異的転写因子 GATA4 とヒストンアセチルトランスフェラーゼ (HAT) 活性をもつ p300 が心筋細胞肥大や心不全の進行に中心的な役割を果たすことを見出した。この p300/GATA4 経路の詳細な制御メカニズムを解明するために、GATA4 の結合タンパク質を TAP (Tandem Affinity Purification) 法にて精製し、プロテオミクスによって網羅的に解析し、73個の新規結合タンパク質を同定した。GATA4 コンプレックスの中には転写伸長反応を促進させる P-TEFb (Positive Transcription Elongation Factor b) の構成タンパクである Cdk9 が含まれていた。そこで本研究の目的は、Cdk9 を阻害することにより、p300/GATA4 活性化による心筋細胞肥大に及ぼす影響を検討することである。

【方法】COS 細胞に、p300 と GATA4 とともに Cdk9 を共発現させ、肥大反応遺伝子の転写活性に与える影響を観察した。また、Cdk9 のキナーゼ活性を喪失した Cdk9 のドミナントネガティブ体を発現させ、転写活性に与える影響を観察した。フェニレフリンによる肥大を誘導する培養心筋細胞の系を用いて、Cdk9 インヒビターである DRB 投与や Cdk9 の siRNA をレンチウイルスで発現させて、肥大反応遺伝子の転写活性や免疫組織学検討を行った。

【結果】Cdk9 は p300 と GATA4 の共発現による肥大反応遺伝子の転写活性を増強し、Cdk9 のドミナントネガティブ体ではこれを抑制した。培養心筋細胞において、フェニレフリンは GATA4 のアセチル化、GATA4 と Cdk9 の結合、ANF や ET-1 等心筋肥大反応遺伝子の転写活性を亢進させ、心筋細胞面積を増加させた。Cdk9 インヒビターである DRB はフェニレフリンによるこれらの効果を抑制した。Cdk9 を siRNA にてノックダウンしたところ、フェニレフリンによる心筋細胞面積の増加を抑制した。

【考察】以上より、Cdk9 は p300/GATA4 による心筋細胞肥大反応に必要であることが示唆された。