線虫体壁筋型トロポニン C のサイト IV Ca2+ 結合とトロポニン I 結合は個体発生に必須である

線虫体壁筋型トロポニン C のサイト IV Ca2+ 結合とトロポニン I 結合は個体発生に必須である

高谷智英1, 寺見浩美1, 宗田充宏2, 飯尾隆義2, 香川弘昭1.

  1. 岡山大学大学院自然科学研究科.
  2. 名古屋大学大学院理学研究科.

Ca2+-binding to site IV and TnI-binding of body-wall muscle troponin C are essential for development in Caenorhabditis elegans

Tomohide Takaya1, Hiromi Terami1, Mitsuhiro Soda2, Takayoshi Iio2, Hiroaki Kagawa1.

  1. Graduate School of Science and Technology, Okayama University, Okayama, Japan.
  2. Graduate School of Science, Nagoya University, Nagoya, Japan.

第42回日本生物物理学会 (京都), 2004/12/13 (ポスター).

Abstract

線虫 Caenorhabditis elegans の体壁筋は、脊椎動物の骨格筋に相当し、その筋形成は個体発生に必須である。分子機能と個体の表現型の関係を調べるため、体壁筋 TnC (TnC-1) に m1: D64N、m2: W153stop の変異を導入し、それらの形質転換体の解析を行った。m1 変異はサイト II の Ca2+ 結合能を失わせるが、形質転換体は正常に発生した。しかし成虫では形態異常や運動不良が観察され、サイト II が筋収縮制御に重要であることが示唆された。

一方、m2 変異はサイト IV の Ca2+ 結合と TnI 結合能を失わせ、形質転換体は致死となった。m2 変異を詳細に解析するため、サイト IV から H ヘリックスに至る領域に変異を導入し、これらの変異 TnC-1 の Ca2+ 結合および TnI 結合能を解析した。TnC-TnI の相互作用は Ca2+ によって促進されたが、サイト IV に Ca2+ 結合がない変異 TnC-1 もTnI と結合した。これらの変異 TnC-1 の形質転換体を作製したが、サイト IV の Ca2+ 結合と TnI 結合のどちらかが失われても、変異 TnC-1 は筋線維集合ができず、個体は致死となった。これらの解析から、生体内では TnC-1 における Ca2+ 結合と TnI 結合の関係がより密接になり、筋形成に必須となることが明らかになった。以上の結果より、トロポニン複合体の形成には、TnC-1 のサイト IV の Ca2+ 結合および TnI 結合の両方が必要であると言える。特に F152 と W153 残基は TnI 結合に必須であり、サイト IV の Ca2+ 結合にも関わっていた。両残基が、サイト IV の構造および H ヘリックスでの TnI 結合に関わると考えられる。これらの知見から、TnC-1 は筋収縮の制御を通して、個体発生にも重要な役割を担っていることが明らかになった。