線虫体壁筋におけるトロポニン C とトロポニン I との相互作用
宗田充宏1, 高谷智英2, 香川弘昭2, 飯尾隆義1.
- 名古屋大学大学院理学研究科.
- 岡山大学大学院自然科学研究科.
Interaction between troponin C and troponin I of body wall in Caenorhabditis elegans
Mitsuhiro Soda1, Tomohide Takaya2, Hiroaki Kagawa2, Takayoshi Iio1.
- Graduate School of Science and Technology, Okayama University, Okayama, Japan.
- Graduate School of Science, Nagoya University, Nagoya, Japan.
第41回日本生物物理学会 (新潟), 2003/09/24 (ポスター).
Abstract
筋収縮制御タンパク質であるトロポニン (Tn) はトロポニン C (TnC)、トロポニン I (TnI)、トロポニン T (TnT) の3種のサブユニットから成り、筋弛緩状態において TnI はアクチン・ミオシンの相互作用を阻害しているが、TnC にカルシウムが結合するとその構造変化が TnI に伝わり、阻害が解除され筋収縮が誘起される。線虫 Caenorhabditis elegans はわずか 1000 個の細胞で構成されており、筋肉組織を有する生物としては最も単純であり、かつ各種データが扱えるモデル生物である。当研究室ではこの線虫の筋収縮制御をテーマとして種々の研究を進めている。線虫の筋肉には主として体壁筋と咽頭筋があり、我々は既に線虫体壁筋 TnC (TnC-1) のカルシウム結合特性を明らかにしてきた。すなわち、N 端ドメインおよび C 端ドメインにはカルシウムがそれぞれ1個ずつ合計2個結合し、カルシウム結合定数はそれぞれ 10-6 M-1 程度の低い値をとり、カルシウム解離速度定数はそれぞれ 400 s-1 および 800 s-1 程度の高い値を示した。これらはいずれも脊椎動物骨格筋 TnC の筋収縮制御部位である N 端ドメインの特性に酷似したものであった。現在これに引き続き、咽頭筋 TnC (TnC-2) の特性を明らかにするのと並行して、TnC-1 と線虫体壁筋 TnI (TnI-1) との相互作用について研究中である。線虫 TnI-1 は脊椎動物骨格筋のそれとは相同性が 30% 程度しかなく、また C 末端に連続した Glu 残基の配列が存在するなどの特徴を持っている。そのため、TnC-1 との相互作用は脊椎動物骨格筋のものとは大きく異なることが予想される。我々は、疎水性蛍光色素 2-p-toluidinylnaphthalene-6-sulfonate (TNS) など各種プローブを用いた蛍光分光滴定法により、TnI-1 による TnC-1 のカルシウム結合特性の変化などの特性を測定している。本学会ではこれらの結果を報告する。