ニワトリ骨格筋細胞における CCK4 の作用

ニワトリ骨格筋細胞における CCK4 の作用

丸山海宝.

信州大学 農学部 農学生命科学科 動物資源生命科学コース.

Abstract

【目的】世界の人口増加や経済発展により、鶏肉の需要が増加している。日本でも消費量は年々増加しており、鶏肉の生産効率向上が課題となっている。当研究室で卵用鶏と肉用鶏の筋芽細胞における遺伝子発現を網羅的に調べた結果、コレシストキニン遺伝子 CCK の発現が卵用鶏で高いことがわかった [1]。本研究では、卵用鶏と肉用鶏での差次的な CCK の発現が筋形成に重要な役割を果たしているのではないかと考え、ニワトリ筋芽細胞の分化における CCK の作用を調べた。

【方法】横斑プリマスロックの10日胚から採取して初代培養した筋芽細胞を用いた。筋芽細胞に、30 uM の CCK4 または CCK8、および 100 ug/ml のインスリンを投与して2~6日間、増殖培地または分化培地で培養した。これらの細胞を、骨格筋の最終分化マーカーであるミオシン重鎖 (MHC) で免疫染色し、細胞核は DAPI で染色した。MHC 陽性細胞の割合を指標に、CCK がニワトリ筋芽細胞の分化に及ぼす影響を評価した。また、30 uM の CCK4 投与して、増殖培地または分化培地で2日間培養した筋芽細胞における遺伝子発現を qPCR で定量した。

【結果】CCK4、CCK8、インスリン単体を投与した筋芽細胞では、対照群と比較して、MHC 陽性細胞および多核筋管の割合に有意な差はなかった。また、対照群と CCK4 投与群では、筋形成に関わる遺伝子 (MYOD1, MYOG, MYH4) の発現量に変化がなかった。このことから、CCK4、CCK8、インスリン単体は筋管形成に影響を与えないことがわかった。一方、CCK4 とインスリンを投与した筋芽細胞では多核筋管の割合が有意に減少した。CCK4 はインスリンと同時に作用することで筋管形成を抑制することが示唆された。

【考察】CCK4 をインスリンと共に投与すると筋管形成が抑制された。CCK4 またはインスリン単体では筋管形成への影響がないことから、CCK4 とインスリンが相互作用して筋分化を抑制していることが考えられる。今後、ニワトリの筋形成におけるCCKの機能やインスリンとの相互作用のメカニズムを明らかにすることで、鶏肉の生産量の増加につながる知見が得られると考えられる。

【参考文献】

  1. Nihashi Y et al., Sci. Rep. 2019; 9: 16527.