骨芽細胞と前破骨細胞の共培養系における骨形成型オリゴ DNA の作用

骨芽細胞と前破骨細胞の共培養系における骨形成型オリゴ DNA の作用

木村智勇1, 高谷智英1,2.

  1. 信州大学大学農学部.
  2. 信州大学バイオメディカル研究所.

第23回日本抗加齢医学会 (東京), 2023/06/09 (口演).

Abstract

【目的】骨粗鬆症は、加齢に伴うロコモティブシンドロームの三大疾患の一つであり、運動機能の低下を招き、要介護や寝たきりのリスクを高める。骨芽細胞による骨形成と、破骨細胞による骨吸収からなる骨リモデリングの均衡が崩壊すると、骨量や骨密度が低下し、骨粗鬆症の原因となる。我々は最近、乳酸菌ゲノム配列に由来する18塩基の骨形成型オリゴ DNA (iSN40) を同定した。iSN40 は、TLR9 非依存的に骨芽細胞の骨分化と石灰化を誘導する一方 (Nihashi, Nanomaterials, 2022, 12: 1680)、TLR9 依存的に前破骨細胞の破骨分化を抑制する (池田, 第21回抗加齢医学会, 2021)。本研究では、骨リモデリングにおける iSN40 の効果を検討するため、骨芽細胞と破骨細胞の共培養下における iSN40 の作用を調べた。

【方法】24-well プレートにマウス骨芽細胞株 MC3T3-E1 (1,000-30,000 cells/well) とマウスマクロファージ細胞株 RAW264.7 (30,000 cells/well) を同時に播種し、RANKL (終濃度 100 ng/ul) 添加培地で破骨分化を誘導した。iSN40、iSN40 の CpG モチーフ (TLR9 認識配列) を置換した iSN40-GC、および TLR9 リガンド配列 CpG-2006 (終濃度 0.3-10 uM) は RANKL と同時に投与した。アルカリフォスファターゼ (ALP) 染色で骨分化を、TRAP 染色で破骨分化を評価した。

【結果】骨芽細胞・破骨細胞共培養系において、0.3 uM の iSN40 および CpG-2006 は破骨分化を抑制した。一方、0.3 uM の iSN40-GC および 10 uM の iSN40 は破骨分化を抑制しなかった。このことから、骨芽細胞存在下でも、低濃度のオリゴ DNA による TLR9 刺激が前破骨細胞の分化を抑制することがわかった。現在、共培養系における破骨分化抑制が骨芽細胞に及ぼす影響を解析中である。

【結論】前破骨細胞の単培養系で示されていた iSN40 の破骨分化抑制作用が、より生体内の環境に近い共培養系でも確認された。破骨分化を抑制する iSN40 は、骨リモデリングの不均衡を改善し、骨粗鬆症に治療効果を示す核酸医薬品シーズとしての応用が期待される。