筋・骨形成型オリゴ DNA によるロコモティブ症候群治療

筋・骨形成型オリゴ DNA によるロコモティブ症候群治療

高谷智英.

日本核酸研究フォーラム (オンライン), 2022/10/11 (口演).

本研究は優秀発表賞を受賞しました。

Abstract

日本をはじめとする超高齢社会では、加齢に伴う筋・骨組織の機能低下によるロコモティブ症候群が増加しており、人々の運動能力や QOL の改善が社会的な課題となっている。筋肉や骨の形成には前駆細胞 (筋芽細胞・骨芽細胞) の働きが不可欠だが、これらの細胞の機能は、加齢や疾患により悪化することが知られている。申請者は、ゲノム配列由来のオリゴ DNA が細胞の運命に影響するという先行研究に着想を得て、筋芽細胞や骨芽細胞の分化に作用するオリゴ DNA を探索した。その結果、乳酸菌ゲノム配列から設計した18塩基の配列が筋分化を著明に促進することを見出した。この筋形成型オリゴ DNA (myoDN) は、特徴的な立体構造によって抗ヌクレオリンアプタマーとして働き、p53 シグナルを活性化して筋分化を誘導する。myoDN は、糖尿病や、がん分泌物によって悪化する筋分化も改善することから、様々な疾患が合併する筋萎縮の治療に有用な核酸医薬シーズとして期待される。また申請者は、骨芽細胞の分化を促進する骨形成型オリゴ DNA (osteoDN) も同定している。osteoDN は骨分化を誘導する一方、破骨細胞の分化を抑制するというユニークな活性を示すことがわかってきた。骨形成を促進し骨吸収を阻害する osteoDN は、骨粗鬆症の治療薬への応用が考えられる。これらの筋・骨形成型オリゴ DNA を用いたロコモティブ症候群の治療について研究を進めている。