抗ヌクレオリンアプタマーによる血管平滑筋の分化と炎症の制御

抗ヌクレオリンアプタマーによる血管平滑筋の分化と炎症の制御

三好愛1, 二橋佑磨2, 三谷塁一1,2, 梅澤公二1,2,3, 下里剛士1,2,3, 高谷智英1,2,3.

  1. 信州大学大学院総合理工学研究科.
  2. 信州大学大学院総合医理工学研究科.
  3. 信州大学バイオメディカル研究所.

日本核酸医薬学会第7回年会 (東京), 2022/08/02 (ポスター).

Abstract

心血管疾患の危険因子である動脈硬化では、血管平滑筋細胞の脱分化と異常増殖、石灰化、炎症などが複合的に生じる。このような血管平滑筋の形質転換には、核タンパク質ヌクレオリンが関与していることが知られており、ヌクレオリンの阻害は動脈硬化の予防や治療に有用であると考えられる。我々は最近、18塩基のオリゴ DNA である iSN04 が、抗ヌクレオリンアプタマーとして機能し、骨格筋の分化と炎症を制御することを報告した。そこで本研究では、血管平滑筋の分化と炎症における iSN04 の作用を検討した。

ラット血管平滑筋細胞株 A10 を iSN04 添加培地で培養した。分化マーカーである平滑筋型アクチンの蛍光強度は、iSN04 投与で有意に上昇した。一方、増殖中の細胞を示す EdU 陽性率は iSN04 投与で有意に減少した。また、TNF-α 刺激による炎症性サイトカイン (IL-6, IL-8, MCP-1) の発現誘導および NF-κB の転写活性も、iSN04 投与で有意に抑制された。これらの結果から、iSN04 は血管平滑筋の分化を促進し、増殖と炎症反応を抑制することがわかった。次に、血管平滑筋の石灰化は骨分化と類似したプロセスであることから、マウス前駆骨芽細胞株 MC3T3-E1 の分化における iSN04 の作用を検討した。iSN04 投群では、骨分化マーカーであるアルカリフォスファターゼの活性が著明に減少したことから、iSN04 は骨分化を抑制することが示唆された。

以上の結果から、iSN04 は血管平滑筋の脱分化による増殖や石灰化を抑制し、動脈硬化巣で生じる炎症反応を阻害することが考えられる。iSN04 は、アテローム性およびメンケベルグ型の動脈硬化の予防・治療に有用な核酸医薬品のシーズとして期待される。