乳酸菌ゲノム配列に由来するオリゴ DNA による血管内皮細胞分化促進効果

乳酸菌ゲノム配列に由来するオリゴ DNA による血管内皮細胞分化促進効果

山口朋子1, 西島美沙江1, 高谷智英2, 川端健二1,3.

  1. 医薬基盤・健康・栄養研究所.
  2. 信州大学大学農学部.
  3. 大阪大学大学院薬学研究科.

日本薬学会第142年会 (名古屋), 2022/03/28 (ポスター).

Abstract

【目的】細菌ゲノム由来オリゴ DNA は Toll 様受容体などに病原体関連分子パターンとして認識され、自然免疫応答を活性化させることで、炎症応答を誘導することが知られている。また、近年、一部のオリゴ DNA が幹細胞の分化を制御することが報告され、オリゴ DNA の新たな機能について注目が集まっている。そこで本研究では、骨格筋の前駆細胞である筋芽細胞の分化を亢進することが報告されている乳酸菌ゲノム配列由来の筋形成型オリゴ DNA (iSN04) を用いて血管内皮細胞分化に及ぼす影響について検討した。

【方法】ヒト iPS 細胞を matrigel 上に播種し、翌日 (Day 0) CHIR99021、BMP4 及び iSN04 を含む培地で3日間培養した。その後、VEGF、Forskolin 及び iSN04 含有培地で2日間培養することで、血管内皮細胞への分化誘導を行なった。Day 3 及び Day 5 の細胞を回収し、血管内皮細胞マーカーである PECAM1 や VE-cadherin 等の発現について解析を行なった。

【結果・考察】iSN04 を分化誘導培地に添加することで、PECAM1+/VE-/cadherin+ 細胞の割合が増加した。また、定量的 RT-PCR 法により解析を行なった結果、iSN04 を添加することで、血管内皮細胞マーカー (KDR、vWF など) 遺伝子の発現上昇が観察された。さらに、Day 3 の細胞を用いて解析した結果、iSN04 を作用させることで、中胚葉マーカーである Brachyury T の発現が上昇することが明らかとなった。以上の結果から、iSN04 は中胚葉への分化を促進することで、血管内皮細胞への分誘導効率を向上させる可能性が示された。