骨形成型オリゴ DNA は TLR9 非依存的に骨芽細胞の石灰化を促進する

骨形成型オリゴ DNA は TLR9 非依存的に骨芽細胞の石灰化を促進する

二橋佑磨1, 三好愛2, 梅澤公二1,2,3, 下里剛士1,2,3, 高谷智英1,2,3.

  1. 信州大学大学院総合医理工学研究科.
  2. 信州大学大学院総合理工学研究科.
  3. 信州大学バイオメディカル研究所.

第21回日本抗加齢医学会 (京都), 2021/06/27 (口演).

Abstract

【目的】骨粗鬆症や関節リウマチによる骨破壊は、ADL (日常生活動作) を低下させる要因である。骨の構造と機能は、厳密に制御された骨形成と骨吸収の代謝バランスによって維持されている。原発性骨粗鬆症では、骨形成に対して骨吸収が優位となり、骨量が減少する。したがって、骨リモデリングの正常化には、骨形成を促進したり、骨吸収を抑制する分子が有効であると考えられる。我々は最近、骨芽細胞の分化・石灰化を促進するオリゴ DNA を同定し、骨形成型オリゴ DNA (osteoDN) と命名した。しかし、非メチル化 CpG モチーフを含む osteoDN の作用機序には不明な点が多い。一般的に CpG-オリゴ DNA は、Toll 様受容体9 (TLR9) に認識され、免疫応答を誘導することが知られている。本研究では、osteoDN による骨芽細胞の石灰化促進が TLR9 依存的であるかを検討した。

【方法】マウス骨芽細胞株 MC3T3-E1 に、osteoDN と TLR9 アンタゴニスト E6446 を投与して分化誘導した。骨分化マーカーの遺伝子発現を qPCR で定量し、骨芽細胞の石灰化をアリザリン染色によって評価した。

【結果】10 uM の osteoDN を投与した MC3T3-E1 では、骨分化初期のマスター転写因子 Runx2 の発現が有意に増加し、Sp7 (osterix) と Bglap2 (osteocalcin) の発現も誘導された。アリザリン染色の結果、0.1 uM 以上の濃度で osteoDN を投与すると、MC3T3-E1 の石灰化が促進されることがわかった。これらの結果は、osteoDN が骨分化プログラムを活性化し、骨芽細胞の分化・石灰化を促進することを示唆する。さらに、E6446 を前投与した MC3T3-E1 に osteoDN を投与しても石灰化が促進され、また、CpG モチーフを置換した変異 osteoDN も石灰化促進作用を示したことから、osteoDN の作用は TLR9 非依存的であることが示された。

【結論】osteoDN は TLR9 非依存的なシグナルで骨芽細胞の成熟を促進することが示されたが、その標的は不明なままである。今後、osteoDN の作用機序を明らかにし、骨形成機能の低下を伴う骨粗鬆症などの疾患に有用な核酸素材の開発につなげたい。