破骨前駆細胞の分化における骨形成型オリゴ DNA の作用

破骨前駆細胞の分化における骨形成型オリゴ DNA の作用

池田玲奈1, 二橋佑磨2, 梅澤公二1,2,3, 下里剛士1,2,3, 高谷智英1,2,3.

  1. 信州大学大学院総合理工学研究科.
  2. 信州大学大学院総合医理工学研究科.
  3. 信州大学バイオメディカル研究所.

第21回日本抗加齢医学会 (京都), 2021/06/27 (口演).

Abstract

【目的】ロコモティブ症候群の三大疾患の一つである骨粗鬆症の克服は、健康長寿社会の実現に不可避の課題である。骨組織の維持には骨形成と骨吸収のバランスが重要である。骨芽細胞が分泌する RANKL は、破骨前駆細胞を破骨細胞へと分化させ骨吸収を促進する。破骨細胞が分泌する RANK は、骨芽細胞の分化を誘導して骨形成を誘導する。しかし骨粗鬆症では、骨形成と骨吸収の均衡が崩れ、骨密度が低下する。我々は最近、骨形成型オリゴ DNA (ODN)「iSN40」が、骨芽細胞の分化を促進することを見出した。しかし、iSN40 が破骨前駆細胞に及ぼす影響は不明である。本研究では、破骨分化における iSN40 の作用を検証した。

【方法】マウス単球/マクロファージ細胞株 RAW264.7 を RANKL 添加培地で培養し、破骨分化を誘導した。0.1-3.0 uM の iSN40 は分化誘導開始時より投与した。また、iSN40 の CG 配列を GC に置換した iSN40-GC を用いて比較した。破骨分化はTRAP染色により評価し、遺伝子発現の変化はqPCRにより定量した。

【結果】0.3 uM の iSN40 投与群では、細胞数が著しく増加し、破骨分化がほぼ完全に抑制された。iSN40 は、破骨マーカー遺伝子 Nfatc1CtskDcstamp の発現量を有意に抑制した。TLR9 依存的な免疫型 ODN「CpG-2006」は、破骨分化を阻害することが報告されている。iSN40 と CpG-2006 はともに炎症性サイトカイン Il1b の発現を誘導し、破骨分化を抑制した。また、これらの作用は TLR9 阻害剤の前投与でキャンセルされた。一方、iSN40-GC は破骨分化を抑制しなかった。以上の結果から、iSN40 の CG 配列が TLR9 を介して破骨分化を抑制することが示された。

【考察】iSN40 は TLR9 依存的に炎症反応を誘導するとともに、破骨分化を抑制した。一方、iSN40 は骨芽細胞の分化・石灰化を促進するが、その作用は TLR9 非依存的であることがわかっている。破骨前駆細胞と骨芽細胞では、iSN40 の標的や作用機序が異なると考えられ、さらなる解析が必要である。iSN40 による骨形成と骨吸収のバランス制御は、骨粗鬆症の新しい治療戦略として期待される。