筋分化を誘導する乳酸菌オリゴ DNA の生体内作用の実証

筋分化を誘導する乳酸菌オリゴ DNA の生体内作用の実証

高谷智英.

信州大学農学部.

日本農芸化学会2020年度産学官学術交流フォーラム (福岡), 2020/03/27 (第15回農芸化学研究企画賞最終報告).

Abstract

超高齢化社会では、加齢性・疾患性の筋委縮による運動機能の低下が、健康寿命に大きな影響を及ぼしている。骨格筋の恒常性は、筋芽細胞 (筋前駆細胞) の増殖と分化によって維持されるが、様々な要因で筋芽細胞の分化能は減弱する。この課題を解決するため、我々は、筋分化を強力に促進する乳酸菌オリゴ DNA「myoDN」の応用可能性について研究を進めてきた。

myoDN の生体内作用を実証する病態モデルとして、糖尿病性筋萎縮症と、がん悪液質 (カヘキシー) に着目した。健常者と比べて糖尿病患者の筋芽細胞では分化能が低下するが、myoDN 投与によりこれを改善することができる。また、がん細胞の培養上清は筋芽細胞の分化を阻害するが、myoDN 存在下では、がん分泌物による筋分化阻害がキャンセルされる。このように myoDN は、糖尿病やカヘキシーが合併する筋萎縮を予防・治療に資する分子として期待される。さらに臨床的な観点から、myoDN の合成コストの低減、および摂取後の吸収効率や安定性の向上を目指し、myoDN の短縮化にも取り組んでいる。最終報告では、これらの成果について発表する。