筋形成型オリゴ DNA は高濃度グルコースで抑制される骨格筋分化を改善する
中村駿一1, 米倉真一1,2, 下里剛士1,2, 高谷智英1,2.
- 信州大学大学院総合理工学研究科.
- 信州大学バイオメディカル研究所.
第19回日本抗加齢医学会 (横浜), 2019/06/15 (口演).
Abstract
【目的】高血糖を伴う肥満や糖尿病は、骨格筋の再生力低下や委縮などの筋疾患を併発する。我々は第18回総会において、高濃度グルコース (high glucose, HG: 25 mM) への持続的な暴露が、マウス筋芽細胞株 C2C12 の増殖や筋分化を減弱させることを報告した。筋芽細胞は、骨格筋の恒常維持に中心的な役割を果たす筋前駆細胞である。したがって、糖濃度異常による筋芽細胞の増殖・分化能の低下が、高血糖で生じる筋力や筋量の低下の一因であることが考えられた。本研究では、当研究室で同定した筋形成型オリゴ DNA である myoDN が、HG への暴露により減弱した筋芽細胞の分化を回復するかを検討した。
【方法】C2C12 細胞を通常グルコース濃度 (normal glucose, NG: 5.6 mM) もしくは HG の増殖培地で培養した。培養4日後に NG/HG 群の細胞を播種し、培地をそれぞれ NG/HG の分化培地に交換して筋分化を誘導した。myoDN は分化培地とともに投与した。分化誘導4日目に、骨格筋の最終分化マーカーであるミオシン重鎖 (MHC) を免疫染色し、筋分化を定量した。また、糖尿病患者の筋芽細胞に対する myoDN の作用を検討した。
【結果】対照となる myoDN 非投与グループでは、NG 群と比較し、HG 群で MHC 陽性細胞率が有意に減少していた。myoDN を投与すると、NG/HG 群ともに、対照と比較して MHC 陽性細胞率が増加した。この結果から、myoDN は、持続的な HG への暴露により減弱する筋芽細胞の分化を回復することが示された。次に、I型糖尿病患者の筋芽細胞 (hMBI) に対する myoDN の有効性を試験した。健常者の筋芽細胞 (hMB) と hMBI を播種し、myoDN を添加した分化培地で筋分化を誘導した。分化誘導2日後の myoDN 非投与群では、hMB と比較し、hMBI の MHC 陽性細胞率は有意に低下していた。myoDN 投与群では、hMB/hMBI ともに、対照と比較して MHC 陽性細胞率が増加した。このことから、myoDN は I型糖尿病で減弱する筋芽細胞の分化を改善することが示された。myoDN は、糖尿病をはじめとする代謝性の筋萎縮の予防や治療に有用であると考えられる。