糖濃度依存的な骨格筋分化抑制に対する筋分化誘導型オリゴ DNA の作用

糖濃度依存的な骨格筋分化抑制に対する筋分化誘導型オリゴ DNA の作用

中村駿一1, 米倉真一1,2, 下里剛士3, 高谷智英1,2.

  1. 信州大学農学部.
  2. 信州大学バイオメディカル研究所.
  3. 信州大学菌類・微生物ダイナミズム創発研究センター.

日本農芸化学会中部支部第183回支部例会 (名古屋), 2018/09/15 (ポスター).

Abstract

【目的】血糖値スパイクは、血糖値が食後急上昇し、その後急降下する現象である。近年、血糖値スパイクが糖尿病や心筋梗塞などの危険因子であることが明らかになりつつある。しかし、血糖値スパイクが筋芽細胞に及ぼす影響についての報告はまだない。筋芽細胞は、骨格筋組織の恒常性維持に中心的な役割を果たす筋前駆細胞である。筋芽細胞の増殖・分化能の低下は、筋力や筋量の減少を伴うサルコペニアの一因となる。筋芽細胞の機能は血糖異常を伴う肥満や糖尿病で障害されるため、本研究では、血糖値スパイクを模した条件で筋芽細胞を培養し、増殖や分化が変化するかを調べた。

【方法・結果】マウス筋芽細胞株 C2C12 を以下の増殖培地で培養した。通常グルコース濃度 (normal glucose; NG、5.6 mM)、高濃度グルコース (high glucose; HG、25 mM)、NG と HG を24時間ごとに交換 (oscillated high glucose; OG)。培養4日目には、NG 群と比較して OG 群と HG 群の細胞数が有意に減少した。次に、上記条件で培養した C2C12 を播種し、分化培地 (differentiation medium; DM) で筋分化を誘導した。NG 群は DM-NG に、HG 群は DM-HG に交換し、OG 群では DM-NG と DM-HG を24時間ごとに交換した。分化誘導4日後に骨格筋マーカーであるミオシン重鎖 (MHC) を免疫染色した結果、OG 群と HG 群では MHC 陽性細胞率が有意に低下していた。以上の結果から、断続的な高濃度グルコースへの曝露は、筋芽細胞の増殖・分化を低下させることが明らかになった。本演題では、我々が見出した筋分化誘導型オリゴ DNA が、糖濃度異常により減弱した筋分化を改善するかを報告する。