筋分化誘導型オリゴ DNA による多能性幹細胞の分化誘導

筋分化誘導型オリゴ DNA による多能性幹細胞の分化誘導

石岡美奈1, 二橋佑磨2, 鏡味裕1,2, 下里剛士3, 高谷智英1,2,4.

  1. 信州大学農学部.
  2. 信州大学大学院総合理工学研究科.
  3. 信州大学菌類・微生物ダイナミズム創発研究センター.
  4. 信州大学バイオメディカル研究所.

日本農芸化学会中部支部第183回支部例会 (名古屋), 2018/09/15 (ポスター).

Abstract

【目的】我々は最近、筋芽細胞 (骨格筋前駆細胞) の分化を著名に亢進する新規核酸分子として、18塩基の1本鎖オリゴ DNA である myoDN を同定した。しかし myoDN が、胚性幹 (ES) 細胞や人工多能性幹 (iPS) 細胞などの多能性幹細胞の分化に及ぼす影響は不明であった。本研究では、myoDN がマウス多能性幹細胞の筋分化を促進するかを検討した。

【方法・結果】マウスiPS細胞 20D17 株の分化誘導を行い、分化誘導5日目に myoDN を添加した。9日目には、myoDN 投与群でのみ心筋様に拍動するコロニーを認めた。10日目以降には対照群でも自発的に分化した心筋様のコロニーが出現したが、その直径は最大でも 300 um 程度であり、myoDN 投与群で観察された直径 1 mm 以上のコロニーと比較して小さかった。13日目にコロニーの拍動数を計測すると、対照群の約130回/分に対し、myoDN 投与群では 200回/分以上の拍動を記録した。

次に、心筋特異的転写因子 Nkx2-5 の遺伝子座に GFP をノックインしたマウスES細胞 hCGp7 株を分化誘導した。分化誘導5日目から myoDN を投与すると、8日目には myoDN 投与群でのみ GFP 陽性の拍動するコロニーが確認された。一方、対照群では GFP の発現および拍動するコロニーは認めなかった。興味深いことに、分化誘導3日目から myoDN を投与した群では、8日目以降15日目に至るまで、拍動するコロニーは全く観察されなかった。以上の結果から、多能性幹細胞の分化誘導において、myoDN は心筋分化を誘導する効果を持つが、その効果は投与時期によって異なることが示された。今後、さらに条件を検討することで、myoDN による効率的な心筋分化誘導法を確立できれば、心臓再生医療などへの応用が期待される。