筋分化を誘導するオリゴ DNA の発見と応用展開

筋分化を誘導するオリゴ DNA の発見と応用展開

高谷智英.

信州大学バイオメディカル研究所代謝ゲノミクス部門.

第36回信州大学バイオメディカル研究所セミナー (伊那), 2018/09/03 (セミナー).

Abstract

超高齢化社会では、加齢性の筋委縮であるサルコペニアを含むロコモティブ症候群の発症が増加している。骨格筋の恒常性は、骨格筋幹細胞が活性化した筋芽細胞の増殖と分化により維持されるが、加齢によって筋芽細胞の分化能が衰えることが知られている。したがって、筋芽細胞に作用し、筋委縮を予防する機能性分子の同定は、健康寿命の延伸に資する食品素材などの開発につながると考えられる。

我々は、筋芽細胞の分化を促進する生物活性物質をスクリーニングした結果、ヒト腸内に存在する乳酸菌Lactobacillus rhamnosus GG のゲノム配列に由来するオリゴ DNA が、極めて強力に筋分化を誘導することを見出し、myoDN と命名した。また、myoDN の作用は、アルカロイド分子ベルベリンとの結合によって顕著に増強されることも明らかにしてきた。

筋分化を促進する myoDN には、筋芽細胞の活性化による筋委縮の予防に加え、横紋筋肉腫の分化誘導による肉腫の増殖抑制作用も期待される。また最近、myoDN が ES/iPS 細胞にも作用することを明らかにしつつあり、再生医療との関わりも視野に入ってきた。本セミナーでは、myoDN の発見から現在までの成果について紹介する。