筋分化誘導型オリゴ DNA とベルベリンの複合体によるニワトリ筋芽細胞の分化誘導

筋分化誘導型オリゴ DNA とベルベリンの複合体によるニワトリ筋芽細胞の分化誘導

二橋佑磨1, 進士彩華2, 梅澤公二2,3, 下里剛士4, 小野珠乙2, 鏡味裕2, 高谷智英1,2,3.

  1. 信州大学大学院総合理工学研究科.
  2. 信州大学農学部.
  3. 信州大学バイオメディカル研究所.
  4. 信州大学菌類・微生物ダイナミズム創発研究センター.

日本家禽学会2018年度春季大会 (東京), 2018/03/30 (口演).

本研究は優秀発表賞を受賞しました。

Abstract

【目的】これまで、ブロイラーの生産性を向上させる配合飼料が開発されてきたが、鶏肉需要の世界的な増加に伴い、さらなる飼料要求率の改善が求められている。我々は最近、乳酸菌 Lactobacillus rhamnosus GG のゲノム配列に由来するオリゴ DNA (myoDN) が、ニワトリ筋芽細胞の分化を強力に促進することを見出した。分子シミュレーションの結果、アルカロイドの一種であるベルベリン (Ber) が myoDN と結合することが示唆された。本研究では、myoDN-Ber 複合体がニワトリ筋芽細胞の分化を誘導するかを検討した。

【方法】肉用鶏 UK チャンキーの10日胚から採取した筋芽細胞を用いた。筋芽細胞は増殖培地で培養し、分化培地で筋分化を誘導した。増殖中の未分化な筋芽細胞に myoDN と Ber を投与し、48時間後にミオシン重鎖 (MHC) の免疫染色を行った。また、これらの細胞における骨格筋遺伝子の発現を qPCR により定量した。

【結果】myoDN 単体投与群では、MHC 陽性の筋細胞の割合、および多核の筋管の形成率が有意に増加した。一方、Ber 単体投与群では筋分化に変化を認めなかった。myoDN + Ber 投与群では、myoDN 単体より強力な筋分化作用が見られた。qPCR の結果、myoDN 単体投与群で、骨格筋型転写因子 MYOG、速筋型ミオシン重鎖 MYH1、筋管形成に必須の膜タンパク質 TMEM8C の発現量の増加を認めた。myoDN + Ber 投与群では、これらの遺伝子群の発現が myoDN 単体投与群よりも増強され、対照群と比べて MYOGTMEM8C が 10 倍以上、MYH1 は 100 倍以上に達した。

【まとめ】医薬品にも用いられる安全・安価な Ber は、myoDN の筋分化促進作用を増強した。ニワトリ筋芽細胞の分化を極めて強力に亢進する myoDN-Ber 複合体には、家禽の筋発生・筋形成を促進し、食肉の増産につながる新たな飼料配合物としての可能性が期待される。