乳酸菌オリゴ DNA と生薬分子の複合体による骨格筋分化誘導

乳酸菌オリゴ DNA と生薬分子の複合体による骨格筋分化誘導

進士彩華1, 梅澤公二1,2, 下里剛士3, 高谷智英1,2.

  1. 信州大学農学部.
  2. 信州大学バイオメディカル研究所.
  3. 信州大学菌類・微生物ダイナミズム創発研究センター.

日本農芸化学会中部支部第180回支部例会 (名古屋), 2017/10/07 (ポスター).

Abstract

【目的】超高齢化社会では加齢性筋委縮を伴うロコモティブ症候群が急増している。筋力や筋量を維持するには、日々の食事を介した予防が重要である。骨格筋組織は、筋芽細胞と呼ばれる先駆細胞の増殖と分化によって恒常性が保たれている。そこで我々は、多彩な生理作用を示すオリゴ DNA (ODN) に着目し、筋芽細胞に作用する ODN 配列の探索と解析を行った。

【方法・結果】マウス筋組織から採取・培養した筋芽細胞を試験に用いた。スクリーニングには、乳酸菌 Lactobacillus rhamnosus GG のゲノム配列に由来する ODN を供した。96穴プレートに播種した筋芽細胞に ODN を投与し、48時間後に骨格筋の最終分化マーカーであるミオシン重鎖 (MHC) の免疫染色を行った。その結果、MHC 陽性筋細胞の割合を著しく増加させる ODN 群を見出し、myoDN (myogenic ODN) と命名した。

myoDN は熱変性で失活することから、その活性は立体構造に依存することが示唆された。分子シミュレーションの結果、myoDN は G スタッキングを有する特徴的な立体構造を取ることが示された。さらに、植物性生薬に含まれるアルカロイドの一種が、myoDN の作用を顕著に増強することを見出した。アルカロイド単体には筋分化促進作用は認めないことから、このアルカロイドは myoDN と結合し、その構造を安定化させることで myoDN の作用を増強すると考えられる。また、一部の塩基を欠失または置換した変異 myoDN の検討を行い、活性に必須の塩基や、アルカロイドに対する反応性に不可欠な塩基を同定した。

myoDN-アルカロイド複合体は、細胞の筋分化を促進する全く新しい機能性分子として、ロコモティブ症候群の予防、食肉の増産、横紋筋肉腫の増殖抑制などへの適用が期待される。