乳酸菌オリゴ DNA による筋分化誘導を活用した鶏肉増産法の開発

乳酸菌オリゴ DNA による筋分化誘導を活用した鶏肉増産法の開発

二橋佑磨1, 進士彩華2, 小野珠乙2, 鏡味裕2, 梅澤公二2,3, 下里剛士4, 高谷智英1,2,3.

  1. 信州大学大学院総合理工学研究科.
  2. 信州大学農学部.
  3. 信州大学バイオメディカル研究所.
  4. 信州大学菌類・微生物ダイナミズム創発研究センター.

日本農芸化学会中部支部第180回支部例会 (名古屋), 2017/10/07 (ポスター).

Abstract

【目的】筋組織は筋芽細胞の増殖と分化によって形成される。我々はこれまで、卵用鶏と比べて肉用鶏では筋芽細胞の増殖・分化が速いこと、骨格筋の最終分化マーカーであるミオシン遺伝子の発現が高いことを見出してきた。肉用鶏の筋形成を担う筋芽細胞の分化をさらに促進できれば、食肉の増産につながることが期待される。我々は最近、乳酸菌 Lactobacillus rhamnosus GG のゲノム配列に由来するオリゴ DNA (myoDN) が、マウス筋芽細胞の分化を強力に促進することを見出した。本研究では、myoDN の筋分化作用がニワトリ筋芽細胞でも認められるかを検討した。

【方法・結果】肉用鶏の10日胚の脚部筋組織から骨格筋幹細胞を採取し、初代培養して得た筋芽細胞を実験に用いた。筋芽細胞に myoDN を投与し、細胞数を経時的に計測した結果、myoDN 投与後 48 時間には顕著な細胞増殖の抑制を認めた。次に、増殖中の未分化な筋芽細胞に myoDN を投与し、48 時間後にミオシン重鎖の免疫染色を行った。myoDN 投与群では、ミオシン重鎖陽性の筋細胞の割合が有意に増加していた。myoDN 依存的な遺伝子発現の変化を qPCR で調べた結果、myoDN 投与群では、骨格筋のマスター因子 MYOD1 の発現量が 3.3 倍、筋分化を誘導する転写因子 MYOG が 2.8 倍、速筋型ミオシン重鎖 MYH1 が 2.7 倍、筋細胞融合に必須の膜タンパク質 TMEM8C が 3.2 倍に増加していた。以上の結果から、myoDN は哺乳類だけでなく鳥類の筋芽細胞の分化も亢進することが示された。さらに我々は最近、myoDN の作用を増強する植物性分子を発見したので報告する。myoDN には、家禽の筋発生・筋形成を促進し、食肉の増産につながる飼料配合物としての可能性が期待される。