哺乳類と鳥類の異種融合骨格筋の作出

哺乳類と鳥類の異種融合骨格筋の作出

高谷智英1,2, 小島正太郎1, 小野珠乙1, 鏡味裕1.

  1. 信州大学農学部.
  2. 信州大学バイオメディカル研究所.

日本畜産学会第122回大会 (神戸), 2017/03/29 (口演).

Abstract

動物最大の組織である骨格筋は、個体の運動機能を実現するだけでなく、食肉として産業的にも重要な組織である。骨格筋の筋線維は、多数の筋細胞が融合して形成された、巨大な多核細胞である。本研究では、新たな食肉資源の創出を目指して、哺乳類と鳥類の異種融合骨格筋の作出を in vitro で試みた。4週齢の C57BL/6 マウスから採取した筋芽細胞に GFP 遺伝子を導入した mMB-GFP 細胞、および、ニワトリ横斑プリマスロック種の10日胚から採取した筋芽細胞に DsRed 遺伝子を導入した chMB-DsRed 細胞を作出した。増殖期の未分化な mMB-GFP と chMB-DsRed を同時に播種して分化誘導すると、1日後には GFP/DsRed 二重陽性の多核の筋管が形成され、マウスとニワトリの筋芽細胞または筋管が自発的に融合し得ることがわかった。次に、chMB-DsRed を2日間分化誘導して筋管を形成させてから、未分化な mMB-GFP を播種した結果、より多くの GFP/DsRed 二重陽性筋管が形成された。一方、mMB-GFP を3日間分化誘導してから未分化な chMB-DsRed を播種したところ、GFP/DsRed 二重陽性筋管はほとんど形成されなかった。以上の結果から、マウス筋芽細胞とニワトリ筋管の、恐らくは細胞膜上に発現するタンパク質の相互作用により、異種の細胞が人工的な操作に依存せず自発的に融合することが示唆された。