血清アディポネクチンレベルは病的な左室肥大の誘導により上昇する

血清アディポネクチンレベルは病的な左室肥大の誘導により上昇する

和田啓道1, 浦修一1, 赤尾昌治2, 益永信豊2, 高谷智英1, 森利依子1, 小坂田元太2, 佐藤哲子3, 島津章4, 長谷川浩二1.

  1. 国立病院機構京都医療センター展開医療研究部.
  2. 国立病院機構京都医療センター循環器科.
  3. 国立病院機構京都医療センター糖尿病研究部.
  4. 国立病院機構京都医療センター臨床研究センター

第49回日本臨床分子医学会学術集会 (京都), 2012/04/13 (ポスター).

Abstract

【背景】疫学研究では低アディポネクチン血症が心血管イベントの独立した危険因子である一方、心不全患者においては、高アディポネクチン血症はむしろ予後の独立した危険因子であり矛盾がある。

【方法と結果】京都医療センター循環器外来を受診した少なくとも3ヶ月以上 NYHA クラスが不変の、心機能正常もしくは慢性心不全の男性患者の内、同意した連続 172 症例を登録、心エコーを施行し、左室重量係数 (LVMI) を計算し、LVMI > 116 g/m2 を左室肥大 (+) とした。また血清を採取し、血清アディポネクチン、レプチン、高感度 CRP (hsCRP)、NT-proBNP レベルを測定した。その結果、レプチン、hsCRP は左室肥大 (+) 群と左室肥大 (-) 群の間で有意差がなかった。しかしながら、アディポネクチン、NT-proBNP は左室肥大 (+) 群で有意に高かった。Stepwise 回帰分析の結果、アディポネクチンの規定因子は NT-proBNP、TG、non HDL-C であった。LVMI と密接な関連をもつ NT-proBNP を除くと、アディポネクチンの規定因子は LVMI、TG、non HDL-C となった。次に病的な心肥大がアディポネクチンレベルに及ぼす影響を評価するため、動物実験を施行した。20-30 g の雄 C57BL/6 マウスに大動脈縮窄 (TAC) と Sham 手術を施行し、15 週間後に血清アディポネクチンレベル、心室体重比を測定した。15 周後に体重は両群で有意差がなかった。しかしながら、心室体重比及び血清アディポネクチンレベルは共に TAC 群で有意に上昇していた。さらに、血清アディポネクチンレベルは心室体重比と有意に相関していた。

【結論】アディポネクチンレベルは内臓脂肪蓄積のみならず、病的な心肥大にも制御されている可能性が示唆された。