新規 GATA4 結合タンパク質 RbAp46, RbAp48 の心筋細胞肥大への影響

新規 GATA4 結合タンパク質 RbAp46, RbAp48 の心筋細胞肥大への影響

寺田太士1, 砂川陽一1,2,3, 渡辺雄一1, 高谷智英2,3, 和田啓道2, 刀坂泰史1, 島津章2, 木村剛3, 藤田正俊3, 長谷川浩二2, 森本達也1.

  1. 静岡県立大学薬学部分子病態学.
  2. 国立病院機構京都医療センター臨床研究センター.
  3. 京都大学大学院医学研究科.

第18回日本血管生物医学会学術集会 (大阪), 2010/12/01 (ポスター).

Abstract

【目的】我々はこれまでに、心筋特異的転写因子 GATA4 が内因性ヒストンアセチルトランスフェラーゼ活性を持つ p300 と協調的に作用し、肥大反応遺伝子の転写を調整して、心不全の発症・増悪に関与することを見出した。そこで p300/GATA4 経路のさらなる作用メカニズムを解明するために、プロテオミクス解析により GATA4 の結合因子 73 個同定した。この中には転写コリプレッサーである nucleosome remodeling and histone deacetylase (NuRD) 複合体の構成因子、RbAp48 (以下 p48) 及び RbAp46 (以下 p46) が含まれていた。本研究では、p48、p46 が p300/GATA4 と機能的コンプレックスを形成するか、心筋細胞肥大反応遺伝子制御にどのように関与するかを検討した。

【方法と結果】大腸菌を用いて p48、p46 と p300、GATA4 のリコンビナントタンパクを作成し、GST pull-down assay 後、Western blotting を行い、p48、p46 は GATA4 だけでなく p300 と直接結合することを見出した。次に、HEK293 細胞に心筋肥大反応遺伝子 ANF プロモーターコンストラクトをトランスフェクションし、転写活性を測定したところ、GATA4 と p300 の共発現によって相乗的に亢進した転写活性は、p48 または p46 を共発現させることで抑制された。さらに、HEK293 細胞に GATA4、p300、p48 を発現させ、核タンパク質を抽出し、免疫沈降-Western blotting を行ったところ、p300 の発現により亢進した GATA4 のアセチル化は、p48 により抑制された。次に、培養心筋細胞において、p48 または p46 を過剰発現させ、肥大反応刺激であるフェニレフリン刺激を行い、ANF 及び ET-1 の心筋肥大遺伝子プロモーター活性を測定したところ、フェニレフリン刺激により上昇した転写活性は、p48、p46 の過剰発現で抑制された。さらに、フェニレフリン刺激により誘導される心筋細胞肥大は、p48 または p46 過剰発現で抑制された。

【結論】以上より、p48、p46 は p300/GATA4 経路に作用して心筋細胞の肥大を抑制した。p48 および p46 が心不全治療のターゲットになる可能性が示唆された。