可溶性レクチン様酸化 LDL レセプター 1 (sLOX-1) は左室肥大を伴う心不全患者の血清で上昇している

可溶性レクチン様酸化 LDL レセプター 1 (sLOX-1) は左室肥大を伴う心不全患者の血清で上昇している

和田啓道1, 高谷智英1,2, 森本達也1,3, 砂川陽一4, 川村晃久1, 森利依子1, 島津章5, 藤田佳子6, 佐藤優子6, 藤田正俊4, 木村剛2, 沢村達也6, 長谷川浩二1.

  1. 国立病院機構京都医療センター展開医療研究部.
  2. 京都大学大学院医学研究科循環器内科学.
  3. 静岡県立大学薬学部分子病態学.
  4. 京都大学大学院医学研究科人間健康科学.
  5. 国立病院機構京都医療センター臨床研究センター
  6. 国立循環器病センター研究所脈管生理部.

第47回日本臨床分子医学会学術集会 (東京), 2010/04/11 (ポスター).

Abstract

【背景】レクチン様酸化 LDL レセプター 1 (LOX-1) は酸化ストレスで誘導されるマルチリガンドレセプターとして知られるが、LOX-1 の慢性心不全における役割については知られていない。

【目的】高血圧性心肥大から心不全を来す過程における左室 LOX-1 の発現と心不全マーカーならびに炎症性サイトカインとの関連を検討した。また心肥大を伴う心不全患者における可溶性 LOX-1 (sLOX-1) の血清レベルを対照である健常者と比較・検討した。

【方法と結果】食塩感受性ダールラット (高血圧モデル) は6週齢から高食塩食負荷を始めると、11 週齢で代償性心肥大を来たし、18 週齢では心不全を来す。このモデルの左室における LOX-1 の発現を検討したところ、代償性心肥大期及び心不全期の左心室における LOX-1 の発現は対照群と比較して各々 4.7 倍、32 倍と有意に上昇していた。また、左室 LOX-1 mRNA レベルは左室駆出分画 (EF) と負の相関を、左室 BNP、MCP-1、TGF-β1、F40/80 と各々強い正の相関を認めた。次に、心肥大を伴う心不全患者と心機能正常で心肥大を有さない健常成人の血清における sLOX-1 レベルを ELISA 法で測定した。その結果、心肥大を伴う心不全患者で sLOX-1 は有意に上昇しており、EF との間に有意な負の相関を認めた。

【結論】高血圧による代償性心肥大期から心不全期への移行の過程で、左室 LOX-1 の発現の著しい亢進が、慢性炎症に関与していると共に、血清可溶性 LOX-1 レベル上昇に寄与している可能性が示唆された。