MicroRNA-1 の過剰発現はマウス ES 細胞の心筋分化を抑制する

MicroRNA-1 の過剰発現はマウス ES 細胞の心筋分化を抑制する

高谷智英1,3, 川村晃久1, 尾野亘3, 高鍋利依子1, 鷄内伸二4, 馬場志郎4, 平家俊男4, 中畑龍俊4, 森本達也1, 北徹3, 島津章2, 長谷川浩二1.

  1. 国立病院機構京都医療センター展開医療研究部.
  2. 国立病院機構京都医療センター臨床研究センター.
  3. 京都大学医学部循環器内科学.
  4. 京都大学医学部発達小児科学.

第45回日本臨床分子医学会学術集会 (神戸), 2008/07/25 (ポスター).

Abstract

MicroRNA (miRNA) はゲノムの非コード領域に存在する短い RNA で、標的遺伝子の mRNA と相補的に結合することでタンパク質への翻訳を阻害する。近年、miRNA-1 および miRNA-133 が心筋と骨格筋で特異的に発現し、心臓発生、心筋細胞肥大、骨格筋分化で重要な役割を担っていること、また、心臓を含む複数の組織で発現する miRNA-143 が細胞分化に関係していることが報告されている。しかしこれらの miRNA が、ES 細胞の心筋分化において機能しているかどうかは明らかになっていない。

我々は、レンチウイルスを用いて ES 細胞に miRNA を過剰発現させ、心筋分化に及ぼす miRNA の影響を RT-PCR によって定量した。miRNA-1 あるいは miRNA-133 を過剰発現させると心筋特異的マーカー Nkx2.5 および ANF の発現量がコントロールに比べて減少したが、miRNA-143 の過剰発現では変化が認められなかった。既に心筋細胞において、サイクリン依存性リン酸化酵素 Cdk9 の 3' UTR が miRNA-1 の標的の一つであることが報告されている。我々は、Cdk9 の 3' UTR を挿入したルシフェラーゼ cDNA 由来の酵素活性を測定することで、ES 細胞においても miRNA-1 が Cdk9 の 3' UTR を標的とすることを明らかにした。Cdk9 は心筋特異的転写因子 GATA4 およびその調節因子 p300 と結合することで ES 細胞の心筋分化を促進することから、miRNA-1 は Cdk9 の翻訳をそがいすることによって ES 細胞の心筋分化を抑制することが示唆された。