レスベラトロール誘導体は β 酸化関連遺伝子の発現を誘導し異所性脂肪の蓄積を減少する

レスベラトロール誘導体は β 酸化関連遺伝子の発現を誘導し異所性脂肪の蓄積を減少する

鈴木真彩1, 米本英都2, 高谷智英2,3, 三谷塁一1,2.

  1. 信州大学大学農学部.
  2. 信州大学大学院総合理工学研究科.
  3. 信州大学バイオメディカル研究所.

第77回日本栄養・食糧学会 (札幌), 2023/05/13 (ポスター).

Abstract

【目的】異所性脂肪とは骨格筋や肝臓など、本来脂肪を溜め込まない臓器についた脂肪のことを指す。特に骨格筋への異所性脂肪の蓄積は、インスリンの感受性を低下させ、血中からの糖取込み能を低下することで高血糖状態を惹起する。従って、骨格筋における異所性脂肪の蓄積を抑制することは、2型糖尿病の予防に繋がると考えられる。そこで本研究では、骨格筋における異所性脂肪の蓄積を抑制する食品成分を探索し、その機能性発現メカニズムの解析を行った。

【方法・結果】食品成分の存在下で、筋芽細胞株である C2C12 細胞に脂質蓄積を誘導し、細胞内脂質蓄積量を Oil Red O 染色で数値化した。その結果、ブドウの果皮に含まれるレスベラトロールの誘導体である pterostilbene (Pte; 3,5-dimethoxy-4'-stilbene) が脂質蓄積を顕著に抑制することを見出した。また、Pte は 5 uM 以上で脂質蓄積を抑制する効果が発揮されることが示された。Pte の添加による筋分化への影響を調べるため、分化マーカーである MHC 発現量を免疫蛍光顕微鏡観察とウエスタンブロッティングで解析した。その結果、MHC の発現量に変化は無く、Pte 存在下でも正常に筋管へ分化することが示された。Pte による脂質蓄積に関連する遺伝子の発現量を定量 PCR で解析した。その結果、脂肪酸の β 酸化経路の主要酵素である Cpt1bLcad、および細胞内でのエネルギー源を糖から脂質に変換する酵素である Pdk4 の発現量が増加した。さらに、化学構造の違いによる効果の比較を行うため、Pte と類似した stilbene 化合物を C2C12 細胞に添加し脂質蓄積量を調べた。その結果、Pte の 3,5 位のメトキシ基が脂質の蓄積抑制に寄与していることが示された。以上の結果から、Pte は骨格筋において構造特異的に異所性脂肪の蓄積を抑制することが示された。