骨芽細胞の分化・石灰化を促進する乳酸菌由来オリゴ DNA の同定

骨芽細胞の分化・石灰化を促進する乳酸菌由来オリゴ DNA の同定

二橋佑磨1, 梅澤公二1,2, 下里剛士1,2, 高谷智英1,2.

  1. 信州大学大学院総合医理工学研究科.
  2. 信州大学バイオメディカル研究所.

日本農芸化学会中部支部第187回支部例会 (名古屋), 2020/09/26 (口演).

本研究は企業奨励賞を受賞しました。

Abstract

【目的】骨組織は、骨形成と骨吸収からなる骨リモデリングによって、骨量・骨強度・骨弾力性を維持している。原発性骨粗鬆症では、骨形成に対して骨吸収が優位となり、骨量が減少する。したがって、骨リモデリングの正常化には、骨形成を促進したり骨吸収を抑制する分子が有効であると考えられる。我々は最近、乳酸菌のゲノム配列に由来する短単鎖オリゴ DNA (ODN) が細胞の分化を制御することを見出した。本研究では、マウス骨芽細胞株を用いて ODN ライブラリをスクリーニングし、骨分化を誘導する新規 ODN 配列を探索した。

【方法・結果】マウス前駆骨芽細胞株 MC3T3-E1 を96穴プレートに播種し、18塩基の ODN (終濃度 10 uM) を添加した培地で培養した。48時間後にアルカリフォスファターゼ (ALP) 染色によって骨代謝を可視化し、骨分化を評価した。スクリーニングの結果、iSN40 配列を投与した群で ALP 活性が顕著に増加することがわかった。iSN40 投与後の遺伝子発現の変化を qPCR で定量した。iSN40 投与 24時間後には、骨形成因子 Bmp4の発現量が 3.5倍、骨分化転写因子 Sp7 (osterix) の発現量が 19倍、48時間後には骨基質 Bglap2 (osteocalcin) の発現量が 2.7倍と有意に増加した。次に、iSN40 が石灰化に及ぼす影響を調べるため、分化誘導9日目にアリザリンレッド染色によってカルシウムの沈着を可視化した。MC3T3 の石灰化は、iSN40 の濃度依存的に促進された。また、iSN40 はアスコルビン酸と相乗的に石灰化を促進した。以上の結果から、iSN40 は骨特異的な遺伝子の発現を制御することで、骨芽細胞の分化・石灰化を促進することが示唆された。今後、iSN40 の作用機序を明らかにし、骨形成機能の低下を伴う骨粗鬆症などの疾患に有用な核酸素材の開発につなげたい。