筋形成型オリゴ DNA は翻訳制御因子ヌクレオリンを標的として筋分化を誘導する

筋形成型オリゴ DNA は翻訳制御因子ヌクレオリンを標的として筋分化を誘導する

中村駿一1, 進士彩華1, 二橋佑磨2, 梅澤公二1,2,3, 下里剛士1,2,3, 高谷智英1,2,3.

  1. 信州大学大学院総合理工学研究家
  2. 信州大学大学院総合医理工学研究科.
  3. 信州大学バイオメディカル研究所.

日本農芸化学会中部支部第187回支部例会 (名古屋), 2020/09/26 (口演).

Abstract

【目的】我々は最近、乳酸菌 Lactobacillus rhamnosus GG のゲノム配列に由来する筋形成型オリゴ DNA として iSN04 を同定した。テロメア配列を有する18塩基の iSN04 は、骨格筋の恒常性維持に重要な役割を担う筋芽細胞の分化を強力に誘導する。iSN04 の活性は立体構造に依存するが、その筋分化誘導作用の機序には未だ不明な点が多い。本研究では、iSN04 の標的タンパク質を同定し、筋分化における動態と機能を解析した。

【方法・結果】iSN04 を固定した磁気ビーズで培養細胞の可溶性タンパク質を沈降し、SDS-PAGE に供した。iSN04 沈降群で得られたタンパク質を質量分析した結果、iSN04 に直接結合するタンパク質としてヌクレオリンを同定した。ヌクレオリンのアプタマーとして、26塩基のオリゴ DNA である AS1411 が知られている。ヒト筋芽細胞に 30 uM の iSN04 または AS1411 を投与し、ヌクレオリンとミオシン重鎖 (MHC) の免疫染色を行った。ヌクレオリンは未分化な筋芽細胞では核に局在するが、MHC 陽性の分化した筋細胞では核に加え細胞質にも存在していた。iSN04・AS1411 投与群ともに、ヌクレオリンの局在は変化しなかったが、MHC 陽性率が有意に増加した。AS1411 が iSN04 と類似の作用を示すことから、iSN04 はヌクレオリンを阻害して筋分化を誘導することが明らかになった。ヌクレオリンは p53 の mRNA 非翻訳領域に結合し、その翻訳を抑制することが報告されている。ヒト筋芽細胞に 30 uM の iSN04 または AS1411 を投与し、p53 のタンパク質量をウエスタンブロットで定量した。対照群と比較し、iSN04・AS1411 投与群ではともに p53 のタンパク質量が有意に増加していた。以上の結果から、iSN04 はヌクレオリンを標的とし、p53 の翻訳阻害を解除することで筋分化を誘導することが示唆された。