ニワトリ骨格筋芽細胞の増殖・分化におけるエンケファリンの影響

ニワトリ骨格筋芽細胞の増殖・分化におけるエンケファリンの影響

二橋佑磨1, 梅澤公二2,3, 小野珠乙1,2, 鏡味裕2, 高谷智英1,2.

  1. 信州大学大学院総合理工学研究科.
  2. 信州大学農学部.
  3. 信州大学バイオメディカル研究所.

日本家禽学会2019年度春季大会 (相模原), 2019/03/30 (口演).

Abstract

【目的】卵用鶏に比べ、肉用鶏の筋芽細胞は活発に増殖・分化する。卵用鶏と肉用鶏の筋芽細胞における遺伝子発現をRNAシーケンシング (RNA-seq) で網羅的に定量した結果、ニワトリ筋芽細胞の特性に寄与する候補因子の一つとしてエンケファリンを同定した。本研究では、エンケファリンがニワトリ筋芽細胞の増殖・分化に及ぼす影響を評価した。

【方法】卵用鶏 (WL) と肉用鶏 (UKC) の筋芽細胞におけるエンケファリン遺伝子 PENK の発現を qPCR で定量し、RNA-seq との相関を確認した。UKC 筋芽細胞に、メチオニン-エンケファリン (MENK) またはロイシン-エンケファリン (LENK) を投与後、細胞数の計測およびミオシン重鎖 (MHC) の免疫染色を行い、筋芽細胞の増殖・分化におけるエンケファリンの影響を評価した。

【結果】qPCR と RNA-seq で得られた PENK の発現量は強い相関を示した (R2 = 0.623)。PENK の発現は、WL および UKC 筋芽細胞でともに、筋分化に伴って減少した。WL と UKC の間で PENK の発現量に有意差はなかった。増殖中の UKC 筋芽細胞に MENK または LENK を投与すると、対照群と比較し、培養72時間後に細胞数が有意に減少した。一方、分化誘導中の UKC 筋芽細胞に MENK または LENK を投与しても、MHC 陽性の筋細胞や筋管が出現する割合は変化しなかった。

【まとめ】本研究により、ニワトリ筋芽細胞はエンケファリンを発現すること、エンケファリンはニワトリ筋芽細胞の増殖を抑制するが筋分化には影響しないことが明らかになった。エンケファリンを含むオピオイドペプチドは、様々な食品に含まれることが知られている。本研究の結果は、飼料中に含まれるオピオイドが家畜の筋形成に及ぼす可能性を示唆する。今後は、エンケファリン以外のオピオイドが筋芽細胞に及ぼす影響についても検討していきたい。