マウス-ニワトリキメラ胚作出の試み
浅井萌音, 富岡郁夫, 高谷智英, 楠戸智也, 伴祐里奈, 小野珠乙, 鏡味裕.
信州大学農学部.
日本畜産学会第125回大会 (相模原), 2019/03/29 (口演).
Abstract
【目的】再生医療技術が急速に発展している現在、臓器不足が課題である。この問題を解決するため、哺乳類胚にヒト多能性幹細胞を注入し、動物体内でヒトの臓器を作出する研究が進んでいる。一方、鳥類は体外で胚発生が進行するため、哺乳類-鳥類間の異種キメラはトリ胚を土台とした体外での哺乳類臓器作出システムとして注目されている。そこで本研究は、マウス ES 細胞をニワトリ胚に移植し、マウス-ニワトリキメラ胚を作出することを目的とした。
【材料と方法】ドナー細胞に GFP 発現マウス ES 細胞を、レシピエント胚に白色レグホンの卵を用いた。キメラ胚は、ニワトリ胚盤葉明域中央部の胚盤下腔にマウス ES 細胞を顕微注入することで作出した。その後、21日間孵卵し、キメラ胚の発生率・孵化率を調べた。孵卵1週間以上生存した個体から脳、心臓、角膜を採取し、ゲノム DNA を PCR 解析することで、マウス ES 細胞のニワトリ胚への寄与を判定した。
【結果と考察】202個のキメラ胚を作出し、61.4% が孵卵2.5日まで発生し、2.47% が孵化した。また、16個のキメラ胚を PCR 解析した結果、8個でマウス ES 細胞由来のバンドが検出された。以上の結果から、マウス-ニワトリキメラ作出の可能性が示された。