筋分化を誘導する乳酸菌オリゴ DNA の生体内作用の実証

筋分化を誘導する乳酸菌オリゴ DNA の生体内作用の実証

高谷智英.

信州大学農学部.

日本農芸化学会2019年度産学官学術交流フォーラム (東京), 2019/03/26 (第15回農芸化学研究企画賞中間報告).

Abstract

超高齢化社会では、加齢性および疾患性の筋委縮が増加しており、運動機能の低下が人々の QOL に大きな影響を及ぼしている。骨格筋の恒常性は、筋前駆細胞である筋芽細胞の増殖と分化によって維持されるが、様々な要因で筋芽細胞の分化能は減弱する。これらの問題を解決するため、我々は、筋芽細胞の分化を強力に促進する乳酸菌オリゴ DNA「myoDN」の応用可能性について研究を進めている。

myoDN の生体内作用が実証できる最適なモデルを検討するため、現在、ヒト筋芽細胞を用い、臨床的な課題に myoDN が適用可能かを検証している。一つは、がん悪液質における筋萎縮である。我々は、大腸がん分泌因子が筋芽細胞の分化を阻害すること、この分化阻害は myoDN によって回復することを見出した。もう一つは、血糖異常における筋萎縮である。高濃度グルコースで培養した筋芽細胞や、糖尿病患者の筋芽細胞では分化能が低下するが、分化誘導時に myoDN を投与することで筋分化を改善することができる。

これらの結果から、myoDN は、がん悪液質や高血糖といった代謝異常によって生じる筋萎縮の進行を抑制できるのではないかと考えている。