ニワトリ骨格筋芽細胞における TLR リガンド依存的な炎症反応

ニワトリ骨格筋芽細胞における TLR リガンド依存的な炎症反応

高谷智英1,2,3, 二橋佑磨1, 小野珠乙2, 鏡味裕2.

  1. 信州大学大学院総合理工学研究科.
  2. 信州大学農学部.
  3. 信州大学バイオメディカル研究所.

日本家禽学会2018年度春季大会 (東京), 2018/03/30 (口演).

Abstract

【目的】Toll 様受容体 (Toll-like receptor; TLR) は様々な外来因子を認識し、細胞内にシグナルを伝達することで免疫反応を誘導する。TLR 遺伝子群の構成は、哺乳類と鳥類で大きく異なるが、鳥類では、免疫系以外の細胞における TLR についての報告は極めて少ない。本研究では、ニワトリ骨格筋芽細胞における TLR 遺伝子群の機能を調べた。筋芽細胞は筋組織の発生と成長で重要な役割を果たす前駆細胞である。筋芽細胞における TLR リガンド依存的な炎症反応の解析により、肉用鶏の飼育と鶏肉の生産に貢献する知見が得られると期待される。

【方法】筋芽細胞はニワトリの 10 日胚から採取し、増殖培地で初代培養した。筋芽細胞に、TLR1/2 のリガンド Pam3CSK4、TLR2/6 のリガンド FSL-1、TLR4 のリガンドであるリポ多糖 (LPS) を投与した後、炎症性遺伝子の発現を qPCR で定量した。さらに、ニワトリ筋芽細胞における TLR 遺伝子群の発現を RT-PCR で検出した。

【結果】ニワトリ筋芽細胞に Pam3CSK4 または FSL-1 を投与すると、4 時間後には、炎症性サイトカインであるインターロイキン 1β, 6, 8 (IL1B, IL6, IL8L2) の発現量がリガンド濃度依存的 (1-100 ng/ml) に亢進した。また、100 ng/ml の LPS を投与すると、2 時間後までに、IL1B および IL6 の発現量は著名に亢進したが、TNF-α および NF-κB の発現は誘導されなかった。卵用鶏白色レグホン (WL) と肉用鶏 UK チャンキー (UKC) の筋芽細胞における TLR 遺伝子の発現を調べた結果、WL は 10 種類全ての TLR 遺伝子 (TLR1A, 1B, 2A, 2B, 3-5, 7, 15, 21) を発現していたのに対し、UKC 筋芽細胞は TLR1A を発現しておらず、品種間で違いがあることを認めた。

【まとめ】ニワトリ筋芽細胞においても TLR 遺伝子群が発現し、TLR リガンド依存的な炎症反応が生じることが明らかになった。今後、品種間で異なる TLR 遺伝子群の発現と表現型の関係を調べていく予定である。