骨格筋分化を促進するアプタマー: ロコモティブ症候群の予防を目指して

骨格筋分化を促進するアプタマー: ロコモティブ症候群の予防を目指して

高谷智英.

信州大学バイオメディカル研究所.

日本薬学会東海支部特別講演会 (静岡), 2017/09/27 (特別講演).

Abstract

超高齢社会では、加齢に伴う筋力の減少を主徴とするロコモティブ症候群が急増している。活力ある長寿社会を創造するためには、運動機能の低下を予防し、健康寿命を延伸することが不可欠である。骨格筋は、筋芽細胞と呼ばれる前駆細胞の増殖と分化によって恒常性が保たれている。しかし加齢によって、筋芽細胞の数や、増殖・分化能が減弱していくことが知られている。

我々は、日常的な食事を介したロコモティブ症候群の予防を目指して、筋芽細胞を活性化する分子を探索してきた。最近、ヒト腸内に存在し、ヨーグルトにも利用される乳酸菌 Lactobacillus rhamnosus GGのゲノム配列に由来する短鎖オリゴ DNA (ODN) が、筋芽細胞の分化を極めて強力に促進することを見出し、この ODN を myoDN と命名した。これまで、免疫系に作用する ODN は多数知られていたが、骨格筋に働く ODN は myoDN が初の例である。

myoDN は、その塩基配列が構成する立体構造に依存して活性を発揮する。我々は、myoDN の分子構造のシミュレーションから、myoDN と結合してその構造を安定化させることで、筋分化作用を劇的に亢進させる化合物の同定にも成功した。

本講義では、異分野の研究者とのコラボレーションによって myoDN を同定した経緯を含め、このユニークな化合物の作用と展望について解説したい。