骨格筋幹細胞における GATA4 の役割

骨格筋幹細胞における GATA4 の役割

高谷智英1,2,3.

  1. 信州大学農学部.
  2. 信州大学大学院総合理工学研究科.
  3. 信州大学バイオメディカル研究所.

日本畜産学会第123回大会 (伊那), 2017/09/06 (口演).

Abstract

骨格筋は、多核の筋細胞である筋線維が集合して構成される。筋線維と基底膜の間には衛星細胞 (サテライト細胞) と呼ばれる幹細胞存在する。通常、衛星細胞は静止状態にあるが、骨格筋の発生・再生過程で活性化し、活発な細胞分裂を行う筋芽細胞 (筋前駆細胞) となる。増殖した筋芽細胞は筋細胞へと分化し、最終的には互いに融合して多核の筋管を形成することで、筋線維を新生・再生する。我々は、衛星細胞および筋芽細胞における、転写因子 GATA4 の発現と機能を解析した。GATA4 は心発生に重要な役割を果たす転写因子だが、骨格筋における働きは明らかになっていない。マウス骨格筋から採取した筋線維の免疫染色から、GATA4 は、静止状態にある Pax7+/MyoD- 衛星細胞では発現しないが、活性化した Pax7+/MyoD+ 衛星細胞で発現することを認めた。また、衛星細胞を初代培養して得られた筋芽細胞の染色から、GATA4 は、増殖中の筋芽細胞で発現しており、最終分化したミオシン重鎖陽性の筋細胞では発現しないことが示された。GATA4 を過剰発現する筋芽細胞の解析から、GATA4 は筋芽細胞の増殖を促進し、筋分化を強力に抑制することが明らかになった。骨格筋特異的に GATA4 を欠損させたマウスでは、衛星細胞の数が減少して骨格筋の再生能が悪化することから、GATA4 の発現が骨格筋の恒常性の維持に必須であることが示された。