筋分化を促進する乳酸菌オリゴ DNA によるヒト横紋筋肉腫の増殖抑制

筋分化を促進する乳酸菌オリゴ DNA によるヒト横紋筋肉腫の増殖抑制

進士彩華1, 梅澤公二1,2, 下里剛士3, 高谷智英1,2.

  1. 信州大学農学部.
  2. 信州大学バイオメディカル研究所.
  3. 信州大学菌類・微生物ダイナミズム創発研究センター.

日本畜産学会第123回大会 (伊那), 2017/09/06 (口演).

Abstract

微生物のゲノムに由来するオリゴ DNA (ODN) は、塩基配列によって多彩な免疫機能を発揮するが、非免疫系の組織や細胞に作用するODNは知られていない。我々は最近、乳酸菌 Lactobacillus rhamnosus GG のゲノム配列に由来する ODN ライブラリを用い、マウス骨格筋幹細胞 (筋芽細胞) への作用をスクリーニングした結果、筋分化を強力に促進する一連の新規 ODN 群 (myoDN) を同定した。本研究では、塩基を置換もしくは欠失させた変異 myoDN の解析から、myoDN の活性に重要な配列を明らかにした。次に、骨格筋を発生母地とする横紋筋肉腫 (RMS) に対する myoDN の効果を検討した。RMS は小児で最も頻度の高い軟部悪性腫瘍だが、標準的な治療法は確立されていない。一部の RMS は筋芽細胞が起源と考えられ、筋特異的な転写因子や構造タンパク質を発現している。myoDN によって RMS の筋分化を誘導できれば、腫瘍の増殖や転移が抑制されることが期待される。ヒト RMS 細胞 KYM1 に myoDN を投与すると、細胞増殖が有意に抑制された。myoDN 投与群では、細胞増殖マーカー MKI67 の発現が減少し、細胞周期阻害因子 CDKN1C の発現が増加していた。今後、myoDN の作用機序や活性構造の詳細を明らかにすることで、横紋筋肉腫に対する核酸医薬品として臨床応用につながることが期待される。