ニワトリとマウスの骨格筋芽細胞の自発的な異種細胞融合

ニワトリとマウスの骨格筋芽細胞の自発的な異種細胞融合

高谷智英1,2,3, 二橋佑磨2, 小島正太郎1, 小野珠乙1, 鏡味裕1.

  1. 信州大学農学部.
  2. 信州大学大学院総合理工学研究科.
  3. 信州大学バイオメディカル研究所.

日本家禽学会2017年度秋季大会 (伊那), 2017/09/05 (口演).

Abstract

【目的】骨格筋芽細胞は、筋分化の過程で互いに融合し、多核の筋管を形成する。筋芽細胞の融合には、膜タンパク質 myomaker とマイクロペプチド miomixer が必須であるが、これらのアミノ酸配列はニワトリとマウスで高度に保存されている。そこで本研究では、ニワトリとマウスの筋芽細胞が自発的に融合し、多核の異種融合筋管を形成するかを検討した。

【方法】ニワトリ横斑プリマスロック種の10日胚から採取した筋芽細胞にレトロウイルスで DsRed 遺伝子を導入した chMB-DsRed、および4週齢の C57BL/6 マウスから採取した筋芽細胞にレトロウイルスで GFP 遺伝子を導入した mMB-GFP を樹立した。chMB-DsRed と mMB-GFP を増殖培地または分化培地で共培養し、Hoechst 染色後、DsRed/GFP 二重陽性の異種融合筋管を観察した。

【結果】chMB-DsRed と mMB-GFP を分化培地で24時間共培養した結果、DsRed/GFP 二重陽性の多核筋管が得られた。この雑種筋管は、融合を続けながら10個以上の核を持つ成熟した筋管に成長することができた。異種融合筋管の出現率は、分化させた chMB-DsRed に未分化な mMB-GFP を播種した場合で最高 10% に達した。逆に、分化させた mMB-GFP に未分化な chMB-DsRed を播種した場合は雑種筋管の形成が観察されなかった。

【まとめ】本研究の結果から、ニワトリ筋芽細胞とマウス筋芽細胞が融合し、多核の雑種筋管を形成することが明らかになった。本研究は、鳥類と哺乳類の自発的な異種細胞融合の最初の例である。今後、哺乳類の筋芽細胞をニワトリなど家禽の骨格筋に移植することで、生体内で雑種骨格筋を形成可能になることが期待される。