筋衛星細胞維持機構の解明

筋衛星細胞維持機構の解明

本橋紀夫, 高谷智英, 朝倉陽子, 朝倉淳.

ミネソタ大学医学部幹細胞研究所.

第69回日本体力医学会 (長崎), 2014/09/19 (口演).

Abstract

【背景】骨格筋は、各種運動や筋疾患による損傷・壊死に対して著しい再生能力を有している。骨格筋再生において中心的役割を果たしているのが筋衛星細胞である。通常静止状態にあるが、筋傷害によって活性化及び増殖した後、互いに或いは傷害を受けた筋線維と融合し、新たな筋線維を形成する。一部の活性化筋衛星細胞は、自己複製し再び静止状態に戻る。以前、我々は MyoD が筋衛星細胞の自己複製を制御する因子である事を報告した (Asakura et al., PNAS, 2007) が、さらに MyoD の下流に存在する細胞周期抑制因子 p21 が筋衛星細胞の自己複製に重要な働きをしている可能性を見出した。

【目的】筋衛星細胞の自己複製機構を p21 に着目して解明することを目的とした。

【方法】p21 KO マウス骨格筋を用いて筋衛星細胞の解析を行った。さらに野生型及び p21 KO 骨格筋から筋衛星細胞を単離・培養及び移植し、in vivo 及び in vitro において筋衛星細胞の自己複製能を検討した。

【結果】p21 KO 筋線維は野生型に比べ、より多くの Pax7 陽性筋衛星細胞を有した。更に p21 KO 筋芽細胞は野生型に比べ、より多くの Pax7 陽性 MyoD 陰性リザーブ細胞 (in vitro 実験系で筋衛星細胞に相当する細胞) を産生した。p21 KO 筋芽細胞は、免疫不全マウス骨格筋に移植後、野生型筋芽細胞に比べ、より多くの筋衛星細胞を産生した。

【結論】筋衛星細胞において p21 は筋分化及び自己複製を制御する可能性がある。

【Keywords】骨格筋幹細胞 自己複製 筋再生