高血圧性心不全ラットにおける左室 LOX-1 の発現

高血圧性心不全ラットにおける左室 LOX-1 の発現

高谷智英1, 森本達也2, 砂川陽一2, 和田啓道2, 川村晃久2, 島津章2, 藤田正俊3, 藤田佳子4, 沢村達也4, 長谷川浩二2.

  1. 京都大学大学院医学研究科循環器内科学.
  2. 国立病院機構京都医療センター展開医療研究部.
  3. 京都大学大学院医学研究科人間健康科学.
  4. 国立循環器病センター研究所脈管生理部.

第46回臨床分子医学会学術集会 (東京), 2009/04/12 (ポスター).

Abstract

レクチン様酸化 LDL 受容体 LOX-1 は炎症性サイトカインや酸化ストレスによって誘導される酸化 LDL 受容体である。LOX-1 経路の活性化は、in vitro において心筋細胞のアポトーシスを誘導し、また in vivo において心臓の虚血再灌流障害を悪化させる。しかし慢性心不全における LOX-1 の役割は明らかになっていない。そこで我々は、食塩感受性高血圧 (DS) ラットの左室における LOX-1 の発現を検討した。DS ラットの左室 LOX-1 mRNA 量は、コントロールの食塩抵抗性 (DR) ラットに比べ、左室肥大を伴う 11 週齢で 4.7 倍に、収縮能の低下を伴う 18 週齢で 32 倍に上昇していた。また免疫染色により、18 週齢の DS ラットの左室血管壁および心筋細胞における LOX-1 の著名な発現亢進を認めた。左室 LOX-1 mRNA 量は、血圧、左室/体重比、左室壁厚、左室収縮径と有意な相関を示し、特に左室駆出率 (r = -0.772)、血中 BNP 濃度 (r = 0.774) および左室 BNA mRNA 量 (r = 0.814) といった心不全マーカー、あるいは炎症性サイトカインである MCP-1 (r = 0.943)、IL-1β (r = 0.760) および TGF-β (r = 0.936) とは極めて強い相関を認めた。以上の結果から、左室 LOX-1 の発現は高血圧性心不全ラットで著名に亢進することが明らかになった。また、LOX-1 が炎症性サイトカインを介して心不全の進展における炎症、線維化、細胞死に関与している可能性が示唆された。