可溶性 VEGF 受容体 2 のメタボリックシンドローム患者血清における上昇と心筋梗塞後の心機能に及ぼす影響
和田啓道1, 佐藤哲子2, 森本達也1, 高谷智英1, 中野為夫3, 藤田正俊5, 島津章4, 長谷川浩二1.
- 国立病院機構京都医療センター展開医療研究部.
- 国立病院機構京都医療センター糖尿病研究部.
- 国立病院機構京都医療センター循環器科.
- 国立病院機構京都医療センター臨床研究センター.
- 京都大学大学院医学研究科人間健康科学.
第45回日本臨床分子医学会学術集会 (神戸), 2008/07/25 (ポスター).
Abstract
重傷虚血性心疾患に対する血管新生療法は注目されたが、血管内皮増殖因子 (VEGF) による無作為二重盲検臨床試験 (VIVA trial) の結果は期待を裏切るものであった。糖尿病や高脂血症といった動脈硬化の危険因子による内皮機能・血管新生能の低下が原因のひとつと考えられる。メタボリックシンドローム (MetS) はこれらの危険因子の集積であり、内皮機能・血管新生能の低下を伴う。全身の内皮機能維持に VEGF シグナリングは重要な役割を果たすが、このシグナルには VEGF とその内皮特異的受容体である膜結合型 VEGFR-2 との結合が必要である。ヒト血中には可溶性 VEGFR-1 (sVEGFR-1)、可溶性 VEGFR-2 (sVEGFR-2) が存在し、これらは共に VEGF の内因性阻害因子として作用すると考えられるが MetS におけるこれらの役割は不明である。そこで京都医療センター循環器外来で同意を得た 84 名から血清を採取し、VEGF、sVEGFR-1、sVEGFR-2 レベルを ELISA 法で測定した。その結果、VEGF、sVEGFR-1 は MetS 群と non-MetS 群で有意差がなかった。しかしながら sVEGFR-2 は MetS 群で有意に上昇していた (p < 0.01)。sVEGFR-2 は高感度 CRP と正の相関を、アディポネクチンと負の相関を認めた。sVEGFR-2 の血中レベル上昇が心筋梗塞後の心機能に及ぼす影響を検討するため C57BL/6 マウスに心筋梗塞を作成し直後から合成 sVEGFR-2 蛋白を7日間持続投与した。その結果、sVEGFR-2 投与群では対照群と比較して梗塞周囲領域における血管密度が有意に低下していた。以上から、MetS 患者における sVEGFR-2 の上昇が心筋梗塞後の内因性血管新生能低下と心機能低下に関与している可能性が示唆された。