Cyclin-dependent Kinase-9 は p300 の histone acetyltransferase 活性に必須である

Cyclin-dependent Kinase-9 は p300 の histone acetyltransferase 活性に必須である

砂川陽一1, 森本達也1, 川村晃久1, 高谷智英1, 和田啓道1, 藤田正俊3, 島津章1, 北徹2, 長谷川浩二1.

  1. 国立病院機構京都医療センター展開医療研究部.
  2. 京都大学大学院医学研究科循環器内科学.
  3. 京都大学大学院医学研究科人間健康科学.

第17回日本循環薬理学会 (大阪), 2007/11/30 (口演).

Abstract

【目的】心筋特異的転写因子 GATA4 は肥大反応により、DNA 結合能が増加し、肥大反応遺伝子の転写活性を亢進する。肥大反応により、GATA4 は ERK、NFATc、ヒストンアセチル化酵素 (HAT) p300 などと巨大な蛋白コンプレックスを形成する。このコンプレックスの破綻により、心筋細胞肥大反応は抑制される。そこで我々は GATA4 コンプレックスを TAP (tandem affinity purification) 法にて精製し、マススペクトメトリーによって同定した。GATA4 コンプレックスの中には P-TEFb (positive transcription elongation factor b) の構成蛋白である Cdk9 および cyclin T1 が含まれ、これらは RNA ポリメラーゼ II の C 末のリン酸化を亢進させることにより、その転写伸長反応を促進させる。そこで本研究の目的は、Cdk9/cyclin T1 が GATA4/p300 と心筋細胞内で機能的コンプレックスを形成し、心筋細胞肥大に必要かどうかをけんとうすることである。

【方法と結果】COS 細胞にトランスフェクションにより GATA4 を発現させ、その細胞から核蛋白を抽出した。免疫沈降-ウェスタンブロットにより、GATA4/p300 と Cdk9/cyclin T1 の結合を確認した。p300 は GATA4 のアセチル化のみならず、GATA4 と P-TEFb の結合を亢進した。さらに、p300 は RNA ポリメラーゼのリン酸化を亢進させることにより、p300 が Cdk9 のキナーゼ活性の制御に関与しているkとが示唆された。これらの効果は p300 のドミナントネガティブ体 (DNp300) により抑制された。一方、1アミノ酸を変異させることによりキナーゼ活性を消失させた Cdk9 のドミナントネガティブ体 (DNCdk9) は、p300 による RNA ポリメラーゼ II のリン酸化の亢進を抑制した。DNCdk9 は p300 による GATA4 のアセチル化を抑制した。このことより、p300 の HAT 活性には Cdk9 が必要であることがわかった。DNCdk9 および Cdk9 インヒビターである DRB は GATA4/p300 による肥大反応遺伝子 ET-1 (endothelin-1) や ANF (atrial natriuretic peptide) の転写活性の亢進を抑制した。培養心筋細胞では、心肥大刺激であるフェニレフリンにより GATA4 と Cdk9/cyclin T1 の結合は増加したが、DRB はその結合を抑制した。DRB は培養心筋細胞におけるフェニレフリンによる心筋細胞肥大や ET-1 や ANF の転写活性を抑制した。

【考察】Cdk9/cyclin T1 と GATA4/p300 は巨大な機能的コンプレックスを形成し、相互に制御し合い、心筋肥大反応に必要であることが示された。