線虫トロポニン C の Ca2+ 結合部位の変異と個体の行動

線虫トロポニン C の Ca2+ 結合部位の変異と個体の行動

高谷智英1, 寺見浩美1, 宗田充宏3, 飯尾隆義3, 香川弘昭1,2.

  1. 岡山大学大学院自然科学研究科.
  2. 岡山大学理学部生物学科.
  3. 名古屋大学大学院理学研究科.

2005年生体運動研究合同班会議 (大阪), 2005/01/08 (口演).

Abstract

線虫 Caenorhabditis elegans の体壁筋は脊椎動物の骨格筋に相当し、その形成は個体発生に必須である。m1: D64N、m2: W153stop のアミノ酸置換を導入した体壁筋トロポニン C (TnC-1) の形質転換体を作成し、表現型を解析した。m1 変異は TnC-1 のサイト II の Ca2+ 結合能を失わせるが、形質転換体は正常に発生した。しかし成虫では体壁筋の形態異常や運動・排卵の不良が観察され、サイト II が筋収縮の制御に重要であることが示唆された。

一方、m2 変異は TnC-1 のサイト IV の Ca2+ 結合とトロポニン I (TnI) 結合能を失わせ、形質転換体は胚性致死を示した。TnC-1 の分子機能と個体の表現型の関係を調べるため、サイト IV から H ヘリックスの領域にアミノ酸置換を導入した変異 TnC-1 の Ca2+ 結合および TnI 結合能を解析した。TnC-TnI の相互作用は Ca2+ によって促進されたが、サイト IV に Ca2+ 結合がない変異 TnC-1 も TnI と結合した。これらの変異 TnC-1 の形質転換体を作製した結果、サイト IV の Ca2+ 結合と TnI 結合のどちらかが失われると、変異 TnC-1 は筋線維上に集合できず、個体は致死になることが明らかになった。以上の結果から、生体内では TnC-1 における Ca2+ 結合と TnI 結合の関係がより密接になり、筋形成に必須となることが考えられる。トロポニン複合体の形成には、TnC-1 のサイト IV の Ca2+ 結合および TnI 結合の両方が必要だが、特に F152 と W153 は TnI 結合に必須であり、サイト IV の Ca2+ にも関わっていた。両残基が、サイト IV の Ca2+ 結合および H ヘリックスでの TnI 結合に必須であると考えられる。